赤目無冠のぶろぐ

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帰ってきたニートの一日の作者。詳しくははじめにへ。

書評~『国家は破綻する』(This time is different)

カーメン・ラインハートとケネス・ロゴフによる『国家は破綻する』(2011年3月、日経BP社)という経済学の本を読んでみた。
↓こんな本です↓

国家は破綻する――金融危機の800年

国家は破綻する――金融危機の800年


要約すると以下のような内容である。

過去800年の世界の歴史を見ると、デフォルトなどの金融危機はあちこちで頻繁に起きていたことで、決して珍しいことではない。
そしてそれらはいずれも「今回は違う(This time is different)」という金融プロの驕りで起こっている。

分厚い本なのでギョッとするが、難解な数式が出てこないので、データを読み取る力さえあれば素人でも読める。
しかも分厚いといっても、後ろの方は索引・参考文献・データ・脚注だけ。
600ページぐらいあるが、それらを除くと実質400ページもない。
いきなり全てを理解しようとすると挫折するので(専門家なら普通に読むのかもしれないが)、
まず目次や「はじめに」を読み、大まかな結論を把握してから、本文にいけばよいと思う。



ざっと概観すると以下のような感じ。

 


・序章:信頼というものは移ろいやすいものなので、数理モデルで分析・評価しにくい→いつ金融危機になるのか予想しにくい

・第一部:金融危機の定義や分類などについてデータを交えながらいろいろ

・第二部:公的対外債務のデフォルト(国外の債権者への返済を怠ること)は、歴史上、ほぼ全世界共通の現象である

 具体的には、6章によると、対外債務のデフォルト回数の記録保持者はスペインフランスも1500~1800年に8回踏み倒している。
→先進国でも意外と詰むときはすぐに詰む。「先進国だから大丈夫」はウソ。
 (私論だが、むしろ経済規模がイタズラに大きくなり易いという意味では、先進国の方が油断して制御できない状態になり易いのかも)

※4章で個人的に気になった所
  中所得国のデフォルトの半分以上は、対外債務GDP比率が60%(*1)未満で、この比率は深刻ではない(p.101)。
 →つまり、返済能力があっても自国の保護を優先するためにデフォルトするケースは多々ある。
  返済能力の有無と返済の意思は違うものと心得よ(個人の貸し借りでもしれっと裏切って踏み倒す奴はけっこういますからね)。
 →ということは持続可能な債務水準が具体的にあるわけではない(借金がいくらになったらアウトというものはない)。
  ぶっちゃけると、結局、決めるのはその時の政府の気分になる(苦笑)。
  しかしそうなると危険性を示す明確な指標や基準がないということになる・・・困りますね・・・。

  *1…因みにこの60%はマーストリヒト条約で定められたユーロ圏の上限(p.196)
    ただ、注意して欲しいのはこれはあくまで「対外」であって「国内」を考慮していない。第三部でその説明がある。

・第三部:対外債務だけではなく国内債務も重視すべき→でもそのデータが完全ではない→もっと政府の報告に透明性を!という話。

・第四部:どの国も高インフレを一度は経験している。また、銀行危機はどんな国でも起きる。

・第五部:有名なサブプライム問題について。

 13章…サブプライム危機は住宅価格の異常な上昇、世界の経常収支の不均衡などの予兆があった。
    2008年初めの時点で、アメリカの住宅ローンはGDP比約90%に達していた。
    が、アメリカは特別な大国なので経常赤字が続いても持続可能だという楽観的議論が多かった。
    連邦準備制度理事会FRB)(*2)は金融政策の範疇ではないため、住宅価格は無視できると判断。

    *2…公定歩合や準備率の決定などの金融政策を行ったり、民間銀行を監視したりしている所。簡単に言うとアメリカの中央銀行

 14章…過去の危機とサブプライム危機は似ているという話。
    具体的には、金融危機が起こると、
    1.資産価格(株価や住宅価格)の下落、2.産出高の減少と失業率の上昇、3.公的債務の増加(左記の2で税収が減るから)
    などの後遺症が残り、下の世代はこれで苦しむことになる。

 15章・16章…今回の金融危機は世界中に一気に広がったという点では、過去の危機と異なる
    (昔と違ってグローバル化しているため、ドミノ倒しになり易い)

・第六部:過去から何を学んだか

 ・早期に金融危機を警戒するシステムがいる(また、そのために透明性のあるデータがたくさんいる)
  例えば、銀行危機に関しては、住宅価格がきわめて信頼度の高い指標になる(p.400)←これは素人でも参考になるかも

 ・国家を超えた独立した国際機関がいる(国レベルだと政治的圧力などで甘くなり、帳簿の粉飾が起こるから)
  で、そのためにIMFのようなものがあるわけだが、今回のアメリカのサブプライム危機を見る限り、それだけでは不十分かもしれないと見解

 ・ソブリン格付けなどの指標で絶えず油断せずに評価を!



ラフですが、上記のような本でした。
アカデミックな部分を正確に知りたい人は買ってみてください。「4000円は高すぎる!」という人は図書館で。
数字とデータばかりで冗長に感じる部分もありますが、その分けっこう色々なことが書かれています。

アマゾンのレビューを見ると感想は様々で、
「データの部分を簡素化して文庫本にして欲しい」という意見もあれば、
「データの出し方のプロセスをもっと明確にして欲しい」という意見も。
同じ本を読んでいるはずなのに逆のことを言う奴が現れるから困ったものです。

特に後者は、かなりのマニアらしく、他の人が絶賛する中、星1つという辛口採点をしていました。
割と昔と今は違うと考え、現在のシステムが絶対だと考えるタイプなのでしょう。

でも私は大衆に訴える意味では前者の要望の方が売れると思いました。
忙しくて時間のないリーマンや経済学をかじってさえいない子供がいきなりこれを読破するのはちょっときついと思うのです。
いずれにせよ、この本は一般人向けと専門家向けに分けた方がいいでしょう。



追記(2013/08/19)
 計算間違えがあったらしい。
 詳しくは「『国家は破綻する』の計算間違い:続報」などを参照。グーグルで「国家は破綻する 計算ミス」と検索してもよい。

 発表によると「政府債務の対GDP比が90%を超えると実質成長率はマイナスになる」という主張は計算間違い。
 緊縮財政を正当化する内容だったが、間違っているので見解が大きく変わることになる。
 これによって採用するべき経済政策も変わる。国民の生活にも関係することなので地味に致命的。
 ただし「政府債務の対GDP比が高くなるほど実質成長率は低くなる」という基本的な傾向は今なお健在。

 それにしても世界的に有名な本で計算ミスって酷いなぁ。
 権威づけに騙されないで査読することが大切だと思った。