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赤目無冠のぶろぐ

アニメ、将棋・麻雀、音楽(作曲、DTM、ベース)、思想など

fc2のぶろぐからやって来た男。詳しくははじめにへ。

加藤智大の『解』の要約・まとめ・レビュー・感想・考察

加藤智大(*1)の『解』(批評社、Psycho Critique 17、2012年)を要約する。

  *1…言うまでもなく、2008年6月8日の秋葉原通り魔事件(無差別殺傷事件)の犯人

要約の作成の動機:
 凶悪犯罪者の心理を知りたい(単純な好奇心)。
 それを知ることで、凶悪犯罪の再発を防ぐ方法を模索したい。
 凶悪犯罪者の本を読む気にならない人にもその情報を公開したい。

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※脚注(*)や総評は筆者(赤目無冠)の意見、それ以外は著者(加藤)の意見

1章 掲示板と私の生活

・事件の原因は3つ:
  ①掲示板に依存していた
  ②掲示板でトラブルがあった
  ③そのトラブルに対する自身のものの考え方がおかしかった

・空白(=孤立している時間=社会との接点がない時間)をすべて掲示板で埋めていた。
 孤立は恐怖(*1)である。

  *1…孤立を極端に恐れる→単なる寂しがり屋?(先天的な性格)、家族・職場などの機能不全?(後天的な環境)。
    いずれにせよ、「孤立」、「社会との接点」という言葉はこの本のキーワード。

・2005年2月、宮城の会社を辞める。上司とのトラブルが原因。当初は放火(*2)を考えるも思い留まる。
 →友人の家に行き、一緒にゲームをする→ゲーム関連の「掲示板」を発見

  *2…この時点で衝動性ありか?

・愛知の工場~埼玉の工場へ(派遣)→朝から晩まで友人と遊ぶ人生だったが一人の時間ができる
 →孤立への恐怖の始まり。「友人は私のことは考えていない、と私は感じてしまう」(*3)。
 →「掲示板」にアクセスする頻度が高まる→掲示板中心の生活に(ただし仕事は継続)

  *3…物事を一方的に捉える傾向あり。また、否定的でもある。

・2006年1月、掲示板で口論→空白の(孤立している)時間ができる→自殺を考えるように

・2006年4月、正社員と仕事でもめ、「ハケンのくせに」と言われ、埼玉の会社を辞める(*4)

  *4…問題があった時に直接、当事者と口論できない傾向あり。
    「勢いで殴る」、「突然、会社を辞める」など、衝動的な解決を図る傾向あり。

・友人と遊びまくる→2006年5月、茨城の工場へ。思い込んだら(*5)茨城しかないと判断。
 →孤立し、自殺を考えるように→無断で工場を辞める

  *5…思い込みの激しい性格。前述した衝動性と関連。

 

・8月、地元青森で、車で対向車線側のトラックに突っ込んで(*6)自殺することを計画
 →孤独を紛らわすためにメイドカフェや風俗へ(自殺を考えていたので、サラ金のカードを使い切ることに)
 →自殺の際、友人にメール。一緒にいてくれない彼らの間違った考え方を改めさせるため(*7)。
  自殺しようとすることで社会との接点(=孤立していない状態)を作った。それが全てだった。
 →出会い系からのメールにより孤立解消→事故り、自殺失敗

  *6…車で突っ込むという発想はこの時点であった模様

  *7…他者を巻き込む身勝手で一方的な判断である。むしろ加藤の考え方が間違っている。
    この思想とそれに基づいて突発的に行動してしまう癖が後の事件に繋がったと考えられる。

・青森の実家へ→母親が「過去のこと」(*8)を謝り、借金を肩代わり
 →母親の父親の死をきっかけに親孝行を考えるように(=母親が社会との接点になった)
 →友人とゲームセンターに依存
 →同時に掲示板にも依存。現実(リアル)では使えない失敗談や自虐的なネタを披露するように。
  母親が失敗を許さない人(*9)だったので、楽しい空間だった。
 →2007年1月、青森の運送会社に就職。仕事・掲示板・実家(母親)・友人で社会との接点を確保。
 →父親が単身赴任先から帰って来たため、家族のやり直しをしようとする
 →しかし、5月、両親が離婚。自身が離婚の引き金を引いた模様。全否定されたと感じる。
  母親が「あんたも帰ってきたし、離婚することにしたから」というようなことを言い、
  金を渡し、自身を家から追い出す(=すなわち親子の縁を切る)。

  *8…重要な問題。読み進めていけば分かる。要するに、元々、家庭環境が異常。

  *9…母親の言動が彼の人格に影響を与えている可能性あり

・2007年7月、家を追い出され、掲示板に「帰る」(*10)ことに→そこでも孤立し、自殺を考えるように
 →掲示板で9月の自身の誕生日までに彼女ができなければ自殺すると予告
 →何人か反応し、実際に会うも、その後は孤立→会社でもいじめられ、孤立→辞職

  *10…独特の表現。それだけ掲示板を家族のような特別なものだと認識し、依存しているということ。
    家庭のような居場所を求めていたのだろう。

・2007年11月、東京の中央線での自殺を決意→人身事故で中央線が止まってしまう
 →駐車場の車で寝続ける→警官と管理人に起こされる→駐車料金を返済するという生きる理由ができる

・静岡の工場へ→2007年12月、駐車料金を返済→職場の友人との約束が社会との接点に
 →2008年2月、掲示板で不細工ネタを披露するように。
  とはいえ、現実の人間との約束(秋葉原に行くなど)があるので、掲示板はあくまで暇つぶし。
 →しかし、約束がなくなり、誘われなくなる。実は周りは私に合わせて無理をしていた?(*11)。
 →再び掲示板へ

  *11…加藤の他者への依存はかなり重たかったのかもしれない。それで避けられていたのかもしれない。
    また、単純に加藤の趣味と合わなかった可能性もある。

・2008年5月29日、掲示板でトラブルに→31日、怒り狂い、秋葉原にナイフを買いに出かける
 →友人のことを思い出し、一時的に思い留まる→6月5日、仕事を失い、依存対象が完全に掲示板だけに

総評:総じて考え方が衝動的で一方的。一度思い込んでしまうとその判断を変えられない傾向あり。
   また、「孤立」と「社会との接点」を繰り返し強調している。


2章 何に対して怒っていたのか

・2008年5月29日、掲示板で成りすましが現れ、自分の存在が「殺された」と解釈した。
 しかし、今では成りすましは悪くないと解釈している。

秋葉原無差別殺傷事件は、成りすましらを心理的に攻撃する手段

総評:目的はともかく、手段がおかしい


3章 事件に転落していくものの考え方

・人のせいにする私のものの考え方に問題あり。100%自分が悪いか、相手が悪いかの二択しかない。
 母親の養育の影響あり。母親にテレビ・マンガなどの「有害情報」を遮断されていた。選択肢がなかった。
 母親の価値観が絶対で、自身は母親のコピーだった。この問題を考え直さず、ずっと我慢してしまった。

・痛みを与えて改心させようとする考え方がある。それが条件反射化(*1)してしまっている。
 背景に母親の虐待あり。2階から落とそうとする、風呂に沈める、裸足で雪の上に立たせる、など(*2)。

・どうして怒っているのかを言わない。口喧嘩というプロセスがない。
 背景:
  食べるのが遅い際、母親が広告のチラシの上に残飯を乗せ、それを自分の口に無理矢理詰め込んだ。
  翌日着ようと用意した服を母親が床に投げ落とした(→服への興味を消した)。(*3)  

・母親が失敗を許さない人間だったので、相談するという発想がなかった

・現実(リアル)でタテマエを使い、「いい子」になる自分に嫌悪感あり。
 一方、掲示板はホンネ社会なので居心地がよかった。
 因みに自分の場合、ホンネと本心は違う。自分のホンネは本心を言葉にすることではなく攻撃すること(*4)。

・相手からの攻撃、という思い込みがある

  *1…条件反射なので、きちんと考え直すことができない。せいぜい後悔するだけ。厄介な性格である…

  *2…これらが暴力で解決しようとする間違った考え方に繋がった模様。
    また、いずれも脈絡のない行動で、彼の衝動的な性格・行動と合致する。
    遺伝的にも環境的にも母親のコピーだったのだろう。

  *3…要するに、母親が口で説明しない人だった。このやり方をコピーしてしまったのだろう。

  *4…これが他者に誤解を与える行動を起こしてしまう理由。口喧嘩というプロセスがないことと対応。

総評:背景に母親あり。これを読む限り、母親もカウンセリングを受けた方が望ましい。
   母親もまた親から虐待を受けていた可能性がある。負の連鎖があったのではなかろうか。


4章 思いとどまるということ

・2008年6月5日、ツナギ事件で無断退職→福井でナイフを購入(近場で普通に売っていることを知らなかった)
 →社会との接点を探す。「止めてほしい」と思う。→見つからず
 →思いとどまる理由を失ったため、6月8日、成りすましらへの心理的な攻撃を開始

総評:思い留まる何かが欲しかった。しかし、あらゆる悪条件を満たしてしまった。


5章 秋葉原無差別殺傷事件

・私は、成りすましらとのトラブルから、彼らを心理的に攻撃した。
 その手段に利用した大事件が、秋葉原無差別殺傷事件
 成りすましらとのトラブルの枠内に秋葉原無差別殺傷事件がある。

・6月8日12時10分、スレッドのタイトルを変更して、事件を宣言→3回躊躇う
 →掲示板で犯罪予告した以上、法に触れるので、後戻りできないことに気づく
 →社会的に死んで孤立するよりは、死刑になって肉体的に死ぬ方がマシと判断(*1)
 →12時33分、4回目、トラックで突入

・刺突。11人を刺したが、3人しか思い出せない。覚えているのは警察官に警棒で殴られたところから。
 記憶が曖昧だったため、警察の捜査を迷走させてしまう(そのせいで当初は複数犯説も)。
 後はメディアが成りすましらを心理的に攻撃してくれるので、目的は達成されたと判断(*2)。

  *1…普通は自身の命を優先するので、かなり特殊な考え方。それだけ彼の場合、孤立しないことが大事だった。

  *2…あまりにも身勝手な判断。とはいえ、是非はともかく、当時の彼は本気だった。

総評:成りすましらを心理的に攻撃したこと(=目的)を強調。個人的には小さなことなので、動機としては共感し辛い。
   百歩譲ってこの目的が彼にとって重大なことだったとしても、
   わざわざ無差別殺傷という凶悪な手段で解決する必要がない。
   本人は論理的に話しているつもりなのだろうが、客観的には論が途中で飛躍している。
   完全に彼の脳内における論理だけが展開されており、周りが見えていない(外部性がない)。
   また、孤立しないことを極端に重視しているため、「懲役より死刑」という極論を展開している。
   3章の最初の二択(この場合はやらないか、やって死ぬか)で考える悪癖がここでも出ている。


6章 誤った手段を使ってしまう性格

・懲役より死刑の方がマシ。孤立するぐらいなら死んだ方がマシ。

・他人に無関心。自身の「守備範囲」が狭い。(*1)

・「してはいけない」だけでは止まれない。軽犯罪(万引)も凶悪犯罪(殺人)もハードルの高さは同じ(*2)。

・手段を選ばない。自分がなく、「してはいけない」が弱い。

  *1…これは筆者にも当てはまる。今日の無縁社会における問題にも繋がる。

  *2…物事を極端な二者択一で決めつけてしまう悪癖あり。これは3章の最初の内容と合致。

総評:総じて手段を選ばないことについて。やはりこの考え方が一般人に比べ、歪んでいる。


7章 報道との矛盾について

・報道は嘘が多い。たとえば「供述した」は「供述調書が作成された」。

総評:これは昔からよく聞く話。だから本人の言動を直接理解するために、今この本を読んでいる。


8章 掲示板への書込みの真意

・掲示板の向こうには生身の人間がいる

・不細工キャラが固定化していた

・6月5日の掲示板の「やることが無い」は孤立を示している

総評:掲示板における彼の書込みは彼の孤独感を意味していた。
   それにしても「やることが無い」を孤立と見なすのは鋭い。
   言われてみれば、筆者もツイッターで「することがない」と言った覚えがある。
   この言葉には、「することがない(から、誰か反応して)」というニュアンスが含まれている。
   もし誰かが反応すること(加藤に言わせれば、社会との接点を確保すること)を望んでいなかったら、
   筆者はそのようなツイートはしなかっただろう。


9章 一線を超えないために

・社会との接点を確保しておくことで、思いとどまる理由を用意しておくことが、対策になる。
 条件反射をやめ、「まあいいや。それより○○しよう」と思える「○○」をたくさん集めておく。

・社会との接点を広く確保せよ。複数のコミュニティに参加すべき。掲示板に一極集中はよくない。

・事件の原因を正確に書き直すと:
  ①社会との接点の少なさを全て掲示板でカバーしていた私生活
  ②掲示板でのトラブルをトラブルにしてしまった私の性格
  ③痛みを与えて相手の間違いを改めさせようとする私のものの考え方

・中学生の頃、クラスメイトを殴った。「反省」したが、半年後、再び暴力をふるってしまった。
 →「反省」だけではなく再発を防止する対策(自己分析・原因の特定・環境の改善など)が必要

総評:比較的まともな見解。精神科医の香山リカさんは理解不能と一蹴してしまったそうだが、
   この章では精神的な問題を抱えている人間が自身の認識を変えるうえで必要なことがいくつも挙げられている。
   むしろここまで冷静に自己分析できる人間がなぜ人を何人も殺したのか理解に苦しむ。
   強いて言えば、不満があった時に「条件反射」で他者を攻撃してしまうところと、
   その攻撃内容が飛躍しすぎているところに問題がありそうである。
   これは前述した「衝動性」や「論の飛躍」と関連している問題で、より普遍的な解決策が欲しい。
   できれば加藤自らその「解」を導いて欲しい。安易に死刑に逃げずに、苦しんで、悩んで、それから死んで欲しい。
   それが遺族への償いであり、再発を防止する真の対策であろう。

解 (Psycho Critique)

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