赤目無冠のぶろぐ

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榎本知郎の『ボノボ 謎の類人猿に性と愛の進化を探る』の感想

榎本知郎京都大学卒の動物行動学者。専門は霊長類学。(wikipedia参照)

ボノボ 謎の類人猿に性と愛の進化を探る』…ボノボというヒトに最も近い霊長類の生態(特に性行動)に迫った本。丸善ブックス。平成9年。

印象的だった内容を以下に列挙していく。
「・」以下が書かれている内容で、「★」以下は自分なりの考察である。

※但し、いずれもヒトもボノボと同じような生物だとしたら、という仮定をしているに過ぎないことに注意。
 「ヒトはサルと違って別格だ」というキリスト教のような考え方をする者には前提からして受け入れられない内容だろうが、
 筆者は常に科学的事実と宗教・法(規範)・倫理などを峻別して判断する姿勢をとっている。最初に断っておきます。

ボノボアフリカで最後に見つかった類人猿(ゴリラ→チンパンジー→ボノボの順)。俗にピグミーチンパンジーとも。主な生息地はザイール

ボノボあいさつ代わりに性行動をする(同性愛行動さえある)。
 性を繁殖のためだけではなく、コミュニケーションのために使っている(射精なしの交尾もある)。

★人間のあらゆる異常性欲も、会話のようなものだと考えれば、ごく自然なことなのかもしれない。
 単にそれが大衆に受け入れられるかどうかという世間体や倫理の問題でしかない。
 また、生産性を追求すること(子孫を残すこと)だけが性行動の全てではないと分かる。
 快楽のためだけの性行動もあるし、相手とスキンシップをとるためだけの性行動もあると分かる。

・若いメスはいつでも発情しており盛んに交尾するが、月経周期はなく排卵もない。すなわち不妊期も交尾する。
 思春期の不妊期に性行動が活発になるようだ。
 この時期にいいオスを選別する目をやしなっているという仮説があるが、本当のことは実はよく分かっていない。

★これも性行動が繁殖のためだけに行われていない証である。
 それと、人間社会の女性は貞操が要求されることがあるが、ボノボの社会ではそのような概念がない。
 むしろ若いうちからたくさんヤることで、いい男を選ぶ目をやしなう方針のようだ。
 (女性の貞操観念の崩壊を嘆く2ちゃんねるvipperたちは、これを読んで何を思うのだろうか。発狂する彼らを見てみたい)
 但し、仮説の域を出ていないようなので、これを言うためにはより説得的な根拠が必要。現状では弱い仮説である。

・「売春」に近いものが確認されている。
 具体的には、サトウキビを分けてもらうためにオスを誘うメスが確認されている
 但し儀式的なもので、ものを分けてもらうための行動にすぎない(射精するとは限らず、形だけの交尾もあるようだ)。

★人間社会では売春が反社会的なものとして扱われることがしばしばあるわけだが、ボノボの場合、メスの方が自ら望んで行動している模様。

・オスもメスも子供の頃から交尾する。
 大人のオスが子供のメスに自身のペニスをあてがうことも!(挿入はないが)
 無理矢理ではなくメスの赤ちゃんが自分から大人のオスのペニスをあてがうことさえある。

小児性愛(ロリコンやペドフィリア)に近い行為がボノボの世界で普通に確認されていることになる。
 但し、注意して欲しいのは、人間とは違いボノボの場合、相手のメスの赤ちゃんが同意しているという点。
 人間の世界で同じようなことは法的にも倫理的にも当然できない。
 そもそもほとんどの場合、相手の女の子は嫌がる(もしくはその判断力が十分にない)。

・同性愛も確認されている

★これも異常かどうか、しばしば議論になる問題だが、少なくともボノボの世界では普通に行われている。

ボノボが異常だといえばそれまでだが、ヒトに遺伝子的にきわめて近い同じ霊長類がそのような行動をしているという点は、動物学的には無視できない。
こうしてみると人間社会で忌み嫌われるあらゆる異常性欲が社会から完全になくならないのも納得がいく。
というのもほとんどの性行動は生得的には自然なことだからである。
単に生理的に(あるいは社会通念上)受け入れられるかどうかという問題があるだけなのだろう。
さらにいえばその生理的な嫌悪感さえ、社会的に後から植えつけられた可能性さえある。
我々は性行動というものが生物学的にどのような意味を持つのか、もう少し深く知る必要があるのではないだろうか。