『sola Visual Fan Book(ビジュアルファンブック)』(一迅(いちじん)社、2007年11月1日発行)をまとめる。
そもそも『sola』とは?
Keyの『Kanon』を書いた久弥とCIRCUSの『水夏』や『D.C.~ダ・カーポ~』を描いた七尾によるアニメーション。
制作はNOMAD。ジャンルは恋愛ファンタジーといったところ。
詳しくは、当ブログの「アニメ『sola』(そら)のまとめ・考察・感想」やwikipediaや以下のアマゾンリンクを参照。
sola ビジュアルファンブック (2007/10/09) ポストメディア編集部 商品詳細を見る |
概要
全128ページ。七尾描き下ろし特大B2ポスター付き。イラストが充実している。
1.Gallery…イラスト(p.3~38)
2.Characters…登場人物の紹介(p.39~64)
3.Story…ストーリー(p.65~104)
4.Extra…グッズ、キャストインタビュー、スタッフインタビュー(p.105~)
本記事ではこのうちの3.Storyと4.Extraだけ詳しく採り上げる。
3.Story…ここでは監督の小林智樹のコメントを要約していく。
・Openingの絵コンテ
・#01「ソライロノカサ」
OPは時間がなく数時間でコンテを描いた。冒頭はベタにいった。
構成は、茉莉と依人の出会い→過去回想→依人と真名のありふれた学園生活→病院の蒼乃とこよりに折り紙
→茉莉との再会と青空のイメージ→繭子の登場→ラストのアクション。
様々な情報を一気に出すことで、先の読めないドラマであることを印象づけようとした。。
辻堂の刀は元々はなかったが、夜禍を人間に戻すアイテムが必要だろうということで生まれた。
・#02「ミアゲルアオ」
1話の期待感を裏切らないで物語の軸を示すことを大事にした。
天井に貼られた空の写真というアイディアのおかげで話が進んだ。
・#03「オダヤカナヒ」
真名を中心とするフランクなラブコメ。紗絵にも注目。
・#04「ネガイフタリ」
一番素直に描けた話。蒼乃とこよりの関係を描いた。
・#05「フリソソグヒカリ」
冒頭は、辻堂の過去から入ることで、3,4話と続いたほのぼのとした雰囲気をシリアスにした。
そうすることで視聴者に緊張感を与えるよう努めた。
構成を複雑にすることで後の展開を予想し辛くする狙いもあった。
テーマである「空」を随所で活かすことで話をうまく繋いだ。
・#06「イケニエノチ」
急展開する回。冒頭では、茉莉・蒼乃・依人の過去を明らかにした。
Aパートでは、茉莉が夜禍であることをあっさりと受け入れる真名を描き、茉莉と依人の幸せな状況を描いた。
そうすることで茉莉と蒼乃の再会のショックが大きくなるようにした。
Bパートでは、緊張感を保ちつつ静かに物語を展開させた(特に車両内での茉莉と蒼乃の会話)。
ラストの夜の学校での茉莉と依人のデートは、尺の都合で一部カットした。
茉莉と蒼乃の間にあった出来事を説明する回想シーンに悩んだ。
キスシーンはもう少し後に持ってくるつもりだったが、全体の構成を見直した時に今回がベストだと判断した。
・#07「ハイイロノヨル」
シナリオ打ちの段階から悩んだ回。
ポイントは蒼乃を幸せな状況から不幸な状況に落とすことで、蒼乃の怒りの矛先を茉莉に向けさせること。
・#08「キエナイオモイ」
7話と同じように悩んだ回。蒼乃を徐々に追い詰めていくように構成している。
紗絵と真名が話を自然に進める原動力になってくれたので助かった。
・#09「ヤクソクノハテ」
辻堂と繭子の関係を描き切るために、依人サイドを一時的に退散させた。
・#10「ユレルマボロシ」
依人の正体が明らかになる重要な回。
当初は苦悩する依人を描く予定だったが、シチュエーションとタイミングが変わったのですぐに受け入れる展開にした。
・#11「ムソウレンガ」
11話は別れの物語。冒頭で空の写真を活かしている。
12,13話のクライマックスを茉莉・蒼乃・依人のみにしたかったので、真名たちの記憶が消えていくことにした。
強引ではあるが、それによって良いシーンができた。
・#12「ユウメイノサカイ」
茉莉・蒼乃・依人の3人の物語であることを明確に示した。
ラストのスクリーン前のシーンが印象に残っている。
・#13「ソラ」
納得のいく結末になるよう心がけた。
ただし蒼乃だけは望んで人間に戻ったわけではないので、納得するには時間が必要だった。
そこでエピローグは1年後の春にした。
蒼乃が生きられることに感謝するようになって物語は終わる。
因みにラストのトマトしるこは深い意味はなく、単なるファンサービス。
・番外編「ベツルート」
水着を出したいというプロデューサーの願いで作られた話。
・SPエピソード「アケルソラヘ」
茉莉と依人が出会う1話の前の話。それぞれの日常を描写した。
この話で茉莉が教会の本を売ることで生計を立てていたことが明らかになる。この設定は原案からあったもの。
・美術設定
4.Extraのキャストインタビュー
・ラストはキャストでさえ予想できなかった
・森宮蒼乃を演じた中原麻衣いわく「色々なことがあったんだとわかってからは、どうやって演じたらいいのか悩みました」。
「依人は『よりしろ』に『ひと』だから絶対に人間じゃない」と予想していた。
・真名を演じた本多陽子によると、こよりを演じた清水愛が「かなり序盤のうちから物語の核心をついていた」
・予告編が面白い
・トマトしるこは四方茉莉を演じた能登麻美子いわく「なし」。あとの人たちは「あり」。
4.Extraのスタッフインタビュー
●久弥直樹の話
・企画は3年ほど前から
・「ベツルート」はあくまで番外編
・『茉莉』という空の下に出られないひとりぼっちの女の子の物語を描きたかった
・茉莉の声を誰にするかでかなり悩んだ
・夜禍という存在は実は茉莉より後から生まれたもの。能力は後付けの設定。
●監督の小林智樹の話
・今回のラストはスタッフで話し合った上でベストだと思われたラストを選んだ。これ以外にもいろんな結末があった。
・茉莉の演出が難しかった
・今回は茉莉・蒼乃・依人の3人が軸だったので、真名の恋愛感情はわざと外した
・「ベツルート」はプロデューサーの永谷の趣味
・勢いで作った分、ちょっと変わった部分も含めて面白く出来た
●シリーズ構成の花田の話
・久弥がゲームライターなので面白かった。同時にゲームとアニメの違いに注意した。
・13話しかないので、久弥さんの中のメインルートの部分だけをアニメ化した
(ゲームのように別ルートを作ることができないため)
・2周目、3周目になって謎がわかってくるゲームの構造を意識したので、2周目、3周目は視聴者に委ねる形にした
・素直に作ったため、あざとい演出は外した(「ベツルート」を除く)
・久弥との打ち合わせで考える余地を与えることにした。視聴者に委ねる部分を多くした。
それゆえ、整合性よりも感情を重視した。
・作品が生きていた。どんな話になるのかというワクワク感があった。
計算通りに全ての整合性がとれてまとまっていると美しくはあるが嘘っぽくなる。
生きているものはどこかが崩れている方が自然。
クリエイターは完全なものを目指してしまうが、キャラクターが命じるままに書いてみるのも大事。
総評
イラストが豊富にあることを考えると、それなりのコスパ。
個人的には、スタッフインタビューや監督のコメントが参考になった。
作り手がどのようなことを考えてアニメを制作しているのかが分かるので面白い。
ファンなら買い。
おまけ
↓実は表紙カバーの裏側にもイラストがある。カバーをはずして見てみることをお勧めする。↓