けものフレンズはなぜ売れたのか~未解決問題や考察もそえて
けものフレンズの考察・感想・レビュー。
なぜ売れたのか?、何が面白いのか?、未解決問題や考察。
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~なぜ売れたのか? 何が面白いのか?~
・動物を(美少女ものに)擬人化するという発想がよかった
この考え方ならキャラクターをたくさん作れる。
動物園も流行るし、グッズをたくさん作ることもできるので、商業主義むき出しで考えても可能性が十分ある。
なぜゲーム版が流行らなかったのか不思議なぐらいである。
また、その絵柄も基本的には子供向けのものにデフォルメしているので、
エロスをむき出しにしているものに比べれば、多くの人が受け入れやすいものになっている。
そのほか、動物を専門家のように分類し始めているブログがいくつかあるので、
マニア心をくすぐる要素があったのも売れた要因の一つだろう。
一般的に言えば、車(メカ)、楽器、ファッション、スポーツなどの種類やクセについて
細かく語りたがる人が出てくるのと同じようなものである。
要するに、面白いし、商売にもなる。そういう理想的な状態を嫌味なく実現できていた。
・ゆるく、優しい世界観
基本的に、最後の盛り上がる所などを除けば、穏やかでストレスのない作品である。
たとえば、登場するサーバルは主人公のかばんのことを決して否定しない。
5話のビーバーとプレーリーも互いのことを尊敬していて、ケンカしない。
6話の体育会系のようなライオンやヘラジカも、ひたすらかばんを褒めるだけである。
これらは本作における地味に重要な特徴であり、職場などでギスギスした人間関係を見かける今日、
初心にかえらされる内容である。
また、「すっごーい」「たーのしー」などのような、ゆるいセリフが多く、頭を空っぽにして見ることができる。
疲れている時に見たい作品であり、小学生程度の理解力しかなくても、楽しめるように工夫されている。
・それでいて、考察したくなる要素も随所にある作品だった。
すなわち、ゆるく優しい部分と知的で不穏な部分のバランスが絶妙だった。
特に面白くなったのはツチノコが出てきた4話の後半。
ここで「人類の絶滅」という本作における重要なテーマが示される。
いま思えば、このあたりから急にネット掲示板などで語り出す者が増えた。
1話だけを見ると、頭を空っぽにして見る幼稚な作品だと思ってしまう(※)が、
実はSFやホラーのような不穏な要素をバランスよく採用している。
ゆえに、大人やインテリが見ても楽しめる要素があちこちにある。
噛めば噛むほど味が出るスルメやガムのようなもので、見る度に発見がある構成になっている。
頭を空っぽにしてアホ丸出しで楽しんでもよいし、
「実は裏があるのではないか」とインテリのように深読みしてもよい
――『けものフレンズ』はそういう二面性を絶妙なバランスで維持できている作品だった。
※裏を返せば、1話の時点ではそれほど面白いとは思えなかった。
そういう意味で、つかみはあまりよくなかったため、その点では課題が残る。
1話だけでその先の魅力が分かる演出が必要だったと思う。
たとえば、ミライの声は1話の時点で出した方がよかったかもしれない。
そうすれば考察したがる者が1話の時点で飛びついてくれるわけだから。
現代社会は速度が優先される時代なので、作品の魅力もすぐに理解できることが要求されている。
・伏線が回収されていく過程が素晴らしい
博士や助手がかばんに渡したマッチ箱や「四神」という言葉、アライグマ達の「お宝(の場所)」、
キツネがさりげなく言ったセルリアンの「ハンター」、アライグマが持っていた赤い羽根、
ツチノコの「溶岩」、ミライの発言などは、いずれも伏線であり、11~12話で次々に解決していく。
ゆえに、名推理で綺麗に犯人が特定されていく推理小説のような爽快感があった。
また、12話で1話を思い出す構成になっている点もよい。
具体的には、かばんがサーバルに教えた紙飛行機と、サーバルがかばんに教えた木登りがその要素だ。
・ツイッターなどのSNSで盛り上がった
今はツイッターなどのSNSがあるので、そこで作品の考察や感想が口コミで広まると盛り上がる傾向がある。
ツイッターには「リツイート」という拡散性のある仕組みがあるので、
一回でも火がつけば、どんなものでも簡単に宣伝できる。
特に本作の場合、「キャラクター(動物)の分類」「謎の敵・セルリアン」「サンドスターとの関係」
「かばんの(帽子の)正体」「人類の絶滅」「アライさんのお宝」など、
考察したくなる要素が随所にある作品だったので、
「#けものフレンズ考察班」というハッシュタグで盛り上がった。
・2011年の冬(1~3月)にヒットしたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』に以下の点で似ている。
・オリジナルなので、どんな話になるのか分からなかった。それゆえ、最後まで緊張感があった。
既存の漫画や小説が無難な形で映像化されている中、本作だけは未知数で続きが気になる内容だった。
・たまに重たい内容もあったので、可愛らしい絵柄とのギャップがあった。
たとえば4話のツチノコや7話の博士と助手が語った「人類の絶滅」というテーマは、
SFやホラーでもありそうな不穏な要素だった。
・12話以内という制限がある割には、よくまとまっていた
・冬アニメなのでライバルが少なかった(一般に番組数が最も少ないのは年度末である1~3月)
以上。これらは売れる(多くの人が面白いと思う)作品を作るうえで必要な条件でもある。
いずれも言うのはたやすいが、達成するのは難しい。その意味で、『けものフレンズ』は本当に恵まれていた。
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~未解決問題や考察~
Qかばんの性別(男か女か)
Aこれは最後までよく分からない。座り方などの仕草は女っぽい。
しかし5話でプレーリードッグにキスされる際、赤面している点では男っぽい。
また、11話で「“僕”はお客さんじゃないよ」と言っている。
通常、「僕」という一人称は男しか使わない。
一人称に「僕」を用いる「ボクっ子(ぼくっこ)」という女性もいるそうなので、断定はできないが…。
そもそも他のフレンズの性別も怪しい。全員、女とは限らない。
たとえばツチノコは「オレ」と言っているので男かもしれない。
さらに言えば本作の場合、性差を意識する恋愛描写がほとんど(まったく?)ない。
フレンズの世界には、異性と付き合って子孫を残すという発想がないのかもしれない。
Qなぜ2話の橋は壊れていたのか
Aこれは過去にミライ達もセルリアンと戦ったからではなかろうか。
バスの運転席と客席が分かれていたのも、かつてミライ達が11話のように戦ったからでは?
Qなぜツチノコは色んなこと(人の絶滅、セルリアン、溶岩、ジャパリコインなど)を知っているのか
A過去に(ゲーム版の)ミライに会っている可能性あり。
実際、6話の最後でアライグマの赤い羽根を見て、驚いている。赤い羽根はミライの帽子に付いていたもの。
Aこれも未解決。今のサーバルが無意識に泣いているので、何らかの関係があるのは明らかだが…。
声優から判断すると、ゲーム版のサーバルということになるが、現時点では何とも言えない。
同じ種類のフレンズが生まれることもあるそうなので、基本的には別のサーバルだと考えられる。
たとえば生き別れの姉妹という設定が考えられる。
しかし個人的には、過去のサーバル=今のサーバルという説の方が面白い。
サーバルは過去、ミライと一緒にいたが、セルリアンにやられ、元の動物に戻ってしまった。
しかしその後、またサンドスターに偶然当たり、再びフレンズになった。
つまり今のサーバルはフレンズ化2回目のサーバル――そう解釈するわけだ。
ただ、この説だと元の動物に戻るとフレンズだった頃の記憶を失うという設定と矛盾してしまう。
ロマンはあるが、論理がない。何らかの補足説明が必要だと思う。
Q10話でミライが「セルリアンは無機物と反応して生まれる」と言及しているが、「無機物」とは?
A諸説あるが、4話のツチノコの話や11~12話の黒いセルリアンとの戦いを考えると、
無機物である「溶岩」のことを示唆したかったのだろう。
Q11話の山の五合目にある残骸は何?
A諸説あるが、ミライが乗っていた飛行機(戦闘機や爆撃機?)ではなかろうか。
実際、10話でミライの傍にいるサーバルが「飛んで来るんだよ」と言っている。
また、1話や12話でセルリアンが紙飛行機に反応していることを考えると、
過去にセルリアンが撃墜した飛行機である可能性もある。
1話だけ見ると「紙飛行機に反応するなんて、セルリアンはなんてアホなんだ」と思ってしまうが、
このように全体を考察すると、実は学習能力のある高度な生命体であると理解できる。
Qアライグマとフェネックが言っていた「お宝(の場所)」とは?
A11話で判明。サンドスターの出る山にある四神のフィルター(が埋設されている場所)のこと。
Q11話の四神の探索中にかばんが見つけた海の向こうにある島は何?
A12話の最後で判明する「ゴコクエリア」か? 詳しいことは2期で明らかになるだろう。
Q11話の四神のフィルターが一つなくなっていたのは何故?
A過去にミライ達が動かしたということだろうか。これも2期で明らかになるかもしれない。
Q11話でアライグマが言った「かばんさんも言ったそうなのだ。困難は群れで分け合えと。」とは?
かばんには心当たりがないようだが…
Aこれも未解決。アライグマがミライの言葉をかばんの言葉と勘違いした、
実はもう1人、フレンズ化したかばんがいた、などが考えられる。
Q12話の最後でかばんの手が黒くなっているのですが…
A諸説あるが、再びフレンズ化している可能性がある。
因みに脚の黒いタイツもいつの間にか長くなっている。