消費税のメリット
消費税のメリット(利点・長所・良い点)を分かり易くまとめてみた。
1.財源調達力が非常に高い。
消費税を1%上げるだけで約2.5兆円(*1)もの税収を確保できる。
しかし、所得税の最低税率5%を1%上げても、約6000億円(*2)しか増えない。
法人税も財源調達力が低い。2011年度ベース(税率30%)で1%あたり約3000億円(*2)。
これは所得税も法人税も、消費税に比べ、課税ベース(課税対象者)が少ないから。
2.安定している(景気変動の影響を受けにくい)
5%にした1997年以降、ずっと10兆円前後(*1)。
リーマンショックの時でさえ、ほとんど減らなかった。
8%にした2014年以降も約16~17兆円(*3)で、安定している。
しかし、所得税や法人税は、景気が悪くなると、激減する。
たとえば、法人税はリーマンショックの時に半減した(2007年は約14兆円、2009年は約6兆円)(*3)。
3.主要税目である所得税や法人税のような問題がない
所得税の場合、所得の捕捉に限界がある(すなわち、租税回避されやすい)。
無理して上げても、高所得者による流動性の高い資産性所得
(利子・配当・キャピタルゲインなど)は海外へ逃げていく。
すると一般サラリーマンの負担が相対的に重くなってしまう。
しかし消費税は把握しやすい税なので、不正しにくい。つまり確実に徴収できる。
法人税の場合、国際的に引き下げ競争が行われている。この流れに逆らうと国際競争力がなくなる。
しかし消費税はこのような心配がない。
4.意外に公平な税である
(1)消費税は引退世代(高齢者)も負担するので、幅広い世代が負担するという点では、公平な税である。
しかし所得税や社会保険料は勤労世代(特に若年層)だけが負担するものなので、不公平である。
また、現存世代が負担すれば、将来世代が楽になるので、世代間の格差の拡大を防げる。この点でも公平である。
(2)消費税は低所得者ほど負担率が高い税なので、しばしば「逆進性」(累進性の逆)があると批判される。
たしかに一時点の所得で判断すると、低所得者ほど消費性向が高い傾向があるので、そうなる。
しかし生涯所得で判断すると、遺産を除けば、生涯所得=生涯消費なので、消費税に「逆進性」はない(*4)。
そもそも消費に着目した税なのだから、所得と比較すること自体、おかしい。
たとえば十分な貯金のある高齢者なら、所得がなくても税負担できるはずである。
特に日本の場合、少子高齢化が進んでいるため、そういう高齢者がたくさんいると考えられる。
※それでも低所得者の不公平感をなくしたいのであれば、所得税の給付付き税額控除を検討すればよい
5.(2と関連するが)世間で言われているほど、景気を悪化させるものではない
IMFのシミュレーションによると、消費税がGDPに与える影響は、所得税や法人税に比べ、小さい(*5)。
ドイツ・フランス・イギリスも付加価値税率を上げたが、税収は減っていない(*2)。
6.インフレになる?
消費税の分だけ物価が強制的に上がるので(いわゆる便乗値上げが起こるので)、
消費税はデフレ脱却が課題になっている今の日本にとって、都合のよい税である。
実際、消費税3%の時(1989年、竹下首相)は、インフレになることが懸念されていた(*2)。
また、8%にした2014年の時も、GDPデフレーターが上がり、100を超えた(*6)。
GDPデフレーターは名目GDP÷実質GDP×100なので、消費税の影響で本格的にインフレになったと言える。
ただし、あくまで増税によるものなので、これが良好なインフレかどうかは議論の余地がある。
そもそもインフレ=好景気とは限らない。スタグフレーションのようなものもあるのだから。
しかし単純にインフレにすることのみを目的とする場合、実は消費税を上げてしまうのが一番早い。
下手な政策よりもインフレ圧力がある。
*1…「5%で10兆円なら、1%で2兆円だから2.5兆円も増えないのでは?」と言われるかもしれない。
これは5%のうちの4%を国税に、1%を地方税にしているから。
ここでは国税だけを考えているので、10兆円÷4%=2.5兆円/%となる。
*2…根拠は小黒一正による『アベノミクスでも消費税は25%を超える』(PHPビジネス新書、2013年7月)
*3…財務省の一般会計税収の推移(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf)を参照
*4…大竹文雄氏と小原美紀氏(http://www2.osipp.osaka-u.ac.jp/~kohara/shohizei.pdf)によると、
驚くべきことに、消費税は生涯所得で判断すると、「累進的」である
*5…https://www.imf.org/external/pubs/ft/sdn/2011/sdn1113.pdfの7頁のグラフ(英文)
*6…内閣府の国民経済計算(GDP統計)の主な時系列データ
(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2017/qe171_2/pdf/jikei_1.pdf)
これの18頁。四半期デフレーター季節調整系列。