有路昌彦による『無添加はかえって危ない』の要約
有路昌彦による『無添加はかえって危ない』の要約・まとめ
(日経BPコンサルティング、2011年8月)
1.食品の品質の保持…保存料、酸化防止剤、日持ち向上剤、殺菌剤、防かび剤
2.食品の嗜好性の向上
味と香り…甘味料、酸味料、調味料、香料など
食感…安定剤、増粘剤など
色…着色料、発色剤など
3.食品の製造・加工…凝固剤、膨張剤、乳化剤など
4.栄養成分の補填…ビタミン、ミネラルなど
・肉(ハムやソーセージ)の色をよくする岩塩も発色剤の始まりで、岩塩内の硝酸塩が亜硝酸塩になる
亜硝酸塩は致死率の高いボツリヌス菌食中毒を防ぐ
・天然(自然)の添加物の方が危ないこともある
例えばセイヨウアカネの根から取れる着色料・アカネ色素は発がん性物質なので、
2004年に既存添加物のリストから削除された
無添加食品のパターン4つ
1.そもそも何が「無添加」なのか分かりにくい
2.もともと食品添加物を使わないものに「無添加」と表示している
3.代替品を使うことで「無添加」と思わせるような表示をする
例えばあるコンビニのサンドイッチには「保存料・合成着色料は使用しておりません」と書かれてあるが、
これには日持ち向上剤である調味料とpH調整剤、酸化防止剤であるビタミンC、
合成ではない天然着色料であるコチニール色素とカラメル色素、発色剤である亜硝酸Naが含まれている
4.食品添加物の危険性を誇張し、消費者を不安にさせる
→そのうえで「無添加」のものは安心だと思わせ、買わせる(マッチポンプ商法)
食品添加物が嫌われる理由
・かつての一部の食品添加物は本当に危険だったから
1955年のヒ素ミルク事件、毒性の高いズルチン(人工甘味料)、カネミ油症事件など
・メディアの偏向報道→その背景に情報弱者である消費者のニーズに応えようとする風潮
食品添加物のリスク
・リスクは量
・損失余命はたばこ6.15年、高血圧5.94年、「保存料104秒」、BSE21秒
→ゼロリスクではないが、木を見て森を見ずになるのはおかしい
・食中毒の方がよっぽど危険→食品を安く安全に提供できるのは食品添加物のおかげ
・あらゆる食品は化学物質であり、毒性がある(水・空気・塩も摂りすぎれば死ぬ)
例えば野菜の硝酸塩も体内で発がん性物質になる
しかし野菜のビタミンやミネラルががんを防ぐため、全体ではベネフィットの方がリスクよりも大きい
・一日摂取許容量(Acceptable Daily Intake, ADI)の定義:
通常、無毒性量(実験動物が一生食べ続けても有害な影響がなかった最大の量)の100分の1
→使用基準はこのADIよりもさらに少ない
例えば保存料(ソルビン酸)が使われているハムなら、一日60kgまでは大丈夫
損する無添加
・保存料を使わないと日持ちしないので、食品の廃棄量が増えてしまう
→コストが増えてしまう(価格が高くなってしまう)
→しかも結局は他の食品添加物(日持ち向上剤など)に頼るだけなので、危険性はほぼ同じ
・保存料を使わないことによる経済損失は凄まじい(保存料を5%減らすと1772億円も損する)
得するのは「保存料は危ない(無添加なら安全)」と吹聴し、そういう講演会で稼ぐ者
リスクコミュニケーションが大事!