赤目無冠のぶろぐ

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帰ってきたニートの一日の作者。詳しくははじめにへ。

『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』のまとめ・要約

ジェイソン・ファン(Jason Fung)による『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』
サンマーク出版、2019年1月)のまとめ・要約・レビュー・考察・感想


※かなり省略したので、全文(全出典)を正確に把握したい人は本書を読もう
 →素人による要約なので、医学用語の使い方が怪しい点に注意

※(PMID: ********)はpubmed(医療論文)のID→グーグルなどで検索すれば出典を見られる

※米印(※)は著者ではなく、筆者(要約した人、つまり私)の補足、意見、解釈

※RCTは無作為(ランダム)化比較試験、
 MAはメタ・アナリシスかシステマティック・レビューの略

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まえがき~はじめに

・ジェイソン・ファンは腎臓病の専門医→2型糖尿病の治療を重視

2型糖尿病の2つの嘘:1.この病気は治らない、2.インスリン投与量を増やすのが唯一の治療法
  1型:インスリンの不足
  2型:インスリンの過剰分泌→インスリン抵抗性(インスリンに体が慣れて効かない状態)

・低カロリー(低脂質)ダイエットは無意味

・肥満の原因は多元的であり、長期で発生する→短期の研究は無意味
 人を対象とした研究だけを見る→動物実験は無視

・第1部は肥満の真実、第2部はカロリー制限(食べ過ぎや運動)という幻想、
 第3部は肥満理論(ホルモン→特にインスリン)、第4部は社会的肥満(生活、貧困、育児や子供)、
 第5部は太る食事(3大栄養素、フルクトース(果糖)と人工甘味料)、
 第6部は解決法(基本はインスリンの抑制)
 (精製・加工された糖質を減らす、蛋白質を過剰摂取しない、良い脂質と食物繊維を摂る、
  間欠的に食事を抜く、ストレスを軽減し良質な睡眠を確保→コルチゾールの抑制)


1部1章 ダイエットの黒歴史

・エネルギー(カロリー)の摂り過ぎは肥満の近因(直接的な原因)だが、
 根本原因(一連の事象を最初に引き起こした原因)ではない
 (近因だけを重視するのは、対症療法に過ぎない)

※これが著者の基本思想で、直接的な西洋医学ではなく、間接的な東洋(漢方)医学に近い

・根本原因はホルモン
 (例えば性差もそうで、女性は男性よりも体脂肪率が高い→だが女性が怠けているわけではない)

・低脂質を推奨しても高炭水化物になる(特に砂糖を摂り過ぎる)だけ
 →アメリカの肥満(BMI30以上)の人の割合は低脂質を推奨した1977年以降、増加傾向


2章 残酷だが、はっきり言うと、肥満は遺伝する

・スタンカードの研究が有名:
  デンマークの養父母と養子の体重→相関なし→環境は関係ない
  実の親と養子の体重→相関あり
  別の環境で育てられた一卵性の双子の研究→70%が遺伝!

※因みに、安藤氏の『日本人の9割が知らない遺伝の真実』によると、体重と身長の遺伝率は90%!

・とはいえ、人の遺伝子が急に変わるはずがないのに、肥満人口は激増している
 それに残りの30%は変えられる→鍵はインスリンというホルモン


2部3章 食事量は関係ない!

・間違った仮説1.摂取カロリーと消費カロリーは独立→実際には摂取量を減らすと消費量も減る

・2.基礎代謝は一定→様々な要因でかなり変わる

・3.意識が高ければ摂取カロリーを制御できる
 →摂取量を決定しているのはホルモンなので、これは無意識的な処理
 →ホメオスタシス(恒常性維持機能)があるので、制御が難しい

・4.脂肪の蓄積は調節不可→レプチンなどのホルモンで調節されている

・5.どんな食品でもカロリーはカロリー→食品によって吸収の過程(代謝やホルモン反応)が違う

・1990~2010年のNHANES(米国国民健康栄養調査)のデータ:摂取カロリーと体重に相関はない
 それどころか男の摂取量はむしろ減少している(PMID: 24631411)

※ただし、身体活動レベルとは関連している

・イギリスのデータ:肥満率は上昇しているのに、摂取カロリーは減少している
 (https://www.ifs.org.uk/bns/bn142.pdf

・食べない人ほどやせにくい→摂取カロリーを無理に減らしても、消費カロリーが減るだけ

・1919年、ワシントンのカーネギー研究所
 https://archive.org/details/humanvitalityeff00beneuoft/

・1944~45年、アンセル・キーズ博士によるミネソタ飢餓実験→摂取カロリーを厳しく制限
 →被験者が夏なのに寒がるように(安静時代謝量が激減したから)
 →結局、体重はカロリー計算による予測の半分程度しか落ちなかった
 →やめたら約1年で元に戻った(しかも実験前よりも太ってしまった)

・一度、消費カロリーが減ると、それが減量期の後も続いてしまう(PMID: 18842775)
 →ゆえにリバウンドしやすい

・カロリー(脂質)制限をしても体重は不変、脳卒中や心臓病のリスクも不変
 (PMID: 16467234←2006年の大規模で長期的な女性のRCT)

・おまけに満腹ホルモンの出が悪くなり、お腹がすく(レプチンの減少、グレリン(食欲)の増加)
 しかもそれが少なくとも1年も続く(PMID: 22029981)
 →多くの人はそれに耐えられない→一時的に減量できても、いずれリバウンドする

・減量すると食べ物に対する欲求を抑えるのが難しくなる(PMID: 18568078)
 →これは自然なホルモンの働きであり、意志の弱さとは無関係


4章 運動神話

・運動しない国の人ほどやせている(※日本もそう)

タンザニアのハッツァ族は一日に32キロも歩くが、
 消費エネルギーは欧米の一般的な成人とほとんど変わらない

・1980年代から2005年の欧米のエネルギー消費量は減少していない
 →現代人のエネルギー消費量は野生哺乳類のエネルギー消費量と一致する
 →運動量の減少が肥満の原因とは考えにくい(PMID: 18504442)

・エネルギー消費量のほとんどは運動によるものではなく、基礎代謝で、これは一定ではない

・肥満の原因のほとんどは食事(※食事の量ではなく質)

・運動をしても体重は少ししか減らない
 減ることは減るが、カロリー計算による予測ほどは減らない(PMID: 19223984)
 (※きつい割に落ちないので、挫折しやすいという問題あり)
 マラソンでさえ少ししか減らない(PMID: 2744924)

※ただし、有酸素運動の批判だけで、基礎代謝に関与する無酸素運動(筋トレ)の批判はない
 ということは、長期的には、無酸素運動の方が大事なのかもしれない

・「代償作用」の問題もある
  運動する→食欲の増進→摂取エネルギーが増える→かえってカロリーオーバーに
  運動する→無意識に他のところで休もうとする→結局、総消費エネルギーは一定に

※教育問題:生徒に無理やり勉強させても、彼らは他のところでサボる
 労働問題:労働者に長時間の残業を強いても、彼らはそれに備えて残業前に作業能率を落とす
 このように、人は心や体が壊れないようにするために、かかる負担を無意識に他で調整しようとする
 これは生理的にはまともな反応であり、一概に責められない


5章 過食

・サム・フェルザ(←サ?)ムの過食実験:1日5000kcal超、21日
  低炭水化物・高脂質の自然食品→体重1.3kg増加、ウエストが2.5cm以上細くなった
  高炭水化物の加工食品→体重7.1kg増加(カロリー計算通り)、ウエストが9cm以上膨らんだ

・イーサン・シムズによる囚人を対象とした過食実験:
  脱落する者が続出→続けられた人の体重もカロリー計算ほどは増えなかった
  →理由はエネルギー消費量(基礎代謝)も激増したから
  →実験後、被験者のほとんどが何の努力もせずに元の体重に戻った
  (そう、困ったことに、あなたの体重は勝手に調整される)

・他の実験も似たような結果(PMID: 1414963, PMID: 7632212)

※私論だが、下手すると、過食してから元の食事量に戻した方がやせるのでは?
 まず、あえて摂取エネルギーを増やすことで消費エネルギーを増やす
 そして元の食事量に戻せば、消費エネルギーが一定なら、一気に体重が落ちていく
 ↓
 つまり典型的な減量の失敗であるリバウンドの逆をやればよい
 従来の間違った減量は短期的には成功したが、長期的には失敗(リバウンド)した
 だから短期的にはわざと失敗して、長期的には成功する方法に変える

・太るのは体重の設定値が高いから(ホメオスタシスの存在)(PMID: 6695117)
 リバウンドとは設定された体重に戻ろうとすること

・ホルモン分泌を制御する視床下部の損傷は体重増加を招く(PMID: 19202508)
 →レプチン(満腹ホルモン)の発見→レプチンを投与する治療もある(PMID: 10546697)
 →だが肥満の人はレプチン抵抗性があるので無意味(レプチンの過剰分泌に体が慣れて効かない)


3部6~7章 インスリン

・鍵はインスリンと、ストレスで増えるコルチゾールというホルモン
 食事を摂らない時間が十分に長ければ、インスリンの分泌量が減る→やがて糖新生が始まる
 この過程の多くは夜中(絶食時)に行われる

※夜更かしや夜食がよくないのは、インスリン分泌を抑える暇がなくなるからだろう

・(※残念ながら、経験的には…)インスリン設定値は年齢とともに上がっていく傾向

・肥満リスクとインスリン値は関連している(PMID: 9303923, PMID: 12226141)

・糖尿病患者のインスリン投与→やはり太る
 (PMID: 17924864, PMID: 11574431, PMID: 9742976, PMID: 17890232)
 血糖値を下げても太る(PMID: 8422777)

※テレビの健康番組などで血糖値が話題になっているが…
 【大原則】:血糖値が低くても、インスリン値が高いままの人は太る!

・インスリノーマ患者→72%体重増加(PMID: 1745987)
 腫瘍の除去後→体重減少(PMID: 11388080)

インスリン値を上げないメトホルミンなら、体重は増えない
 (PMID: 10594464, PMID: 9742977)

※このメトホルミンの優れた効果は銀座東京クリニック院長の福田一典氏も言及している
 「漢方がん治療」を考える(https://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic

・SGLT-2阻害剤はインスリン値を下げる(PMID: 23412078)
 →体重減少(PMID: 22238392)→1年続く(PMID: 21816980)

・薬と体重変化のMAあり(PMID: 25590213)
 薬:オランザピン、ガバペンチン、クエチアピン→インスリン値を上げる→体重増加
 (PMID: 14728104, PMID: 14655224, PMID: 23066773)

インスリンの分泌量が少なくなる1型糖尿病の特徴:急激にやせる

・というわけで、体重の設定値を調節しているのはインスリン
 インスリン値を見るだけで、75%の精度で体重の変化を予測できる(PMID: 24172304)

・食べ過ぎるから太るのではない→太っているから食べ過ぎる

インスリン値が高くなると、満腹信号を出すレプチンの働きが阻害されるという説がある
 また、常に多量のレプチンにさらされていると、レプチン抵抗性を持ってしまう
 (PMID: 15314628, PMID: 18926322, PMID: 14749506)


8章 ストレス

・ストレス→コルチゾール(プレドニゾン)→血糖→インスリン分泌→インスリン抵抗性
 (PMID: 9626108, PMID: 6355186, PMID: 7033265, PMID: 12371987)

コルチゾールが過剰に増えるクッシング病→腹部肥満、体重増加
 コルチゾールが減るアジソン病→体重減少
 (PMID: 12414841, Harrison's Principles of Internal Medicine)

コルチゾールBMIやウエスト・ヒップ比に関連
 (PMID: 10373217, PMID: 1640867, PMID: 14594110, PMID: 24852462)

・運動(活動的になること)やマインドフルネスはストレスを減らす(PMID: 21977314)

・睡眠時間が短い(7時間未満)と、体重が増える
 (PMID: 20175399, PMID: 15283000, PMID: 18517032←MA)

・睡眠不足→ストレス→コルチゾール↑、インスリン感受性↓、インスリン
 →インスリン抵抗性→2型糖尿病
 (PMID: 22787499, PMID: 9415946, PMID: 16227462, PMID: 8338493,
  PMID: 25658017, PMID: 14694011)

・睡眠時間が短いと、レプチン(満腹ホルモン)が減り、グレリン(食欲ホルモン)が増え、
 体重が増える(PMID: 15602591)

・ただし、ストレスのない睡眠不足なら問題ない(PMID: 20545838)
 つまり本質的な問題は睡眠不足そのものではなく、睡眠不足でストレスが溜まること


9章 低炭水化物ダイエットの是非について

・AHA(アメリカ心臓協会)が推奨した低脂質ダイエットは非科学的で実証されていない

・低炭水化物(アトキンス)ダイエットは短期間でかなりの体重を減らせる
 低脂質ダイエットよりも効果がある(PMID: 12761364, PMID: 17341711←RCT)
 ↓
・この体重減少はDIRECT試験(RCT)でも確認できる(PMID: 18635428)
 しかもコレステロール値や血糖値が改善し、代謝がよくなる
 (食物繊維を摂る地中海食ダイエットも有力)

・低脂質ダイエットは低炭水化物ダイエットよりも
 エネルギー消費量を減らしてしまう(代謝が悪くなる)(PMID: 22735432)

2型糖尿病の肥満患者が低炭水化物食にすると、エネルギー摂取量が自然に減る(PMID: 15767618)

・高度に精製・加工された炭水化物(ケーキなど)は中毒性があり、食べ過ぎる
 (ゆえに甘いものは別腹?)

しかし…

・長期(2年間)では、低脂質でも低炭水化物でも同じ効果で、リバウンドする
 また、どちらも脱落する者が多く、現実的には続けるのが困難
 (PMID: 20679559, PMID: 18700873←MA)

・栄養学におけるアジア人のパラドックス
  アジア人(中国人や日本人)は白米などの炭水化物をよく食べるが、やせている
 →しかし糖分摂取量は少ない→諸悪の根源は「糖分」か

パプアニューギニアのキタヴァ島の人々はイモなどのでんぷん(炭水化物)
 をよく食べるが、インスリン値とBMIが低い(PMID: 10535381)
 →炭水化物のみがインスリン値を上げるという考え方は正しくない


10章 インスリン抵抗性

・時間依存:肥満期間が長いほど減量が困難(これはカロリー計算だけでは説明不可)

・長時間にわたるインスリンの過剰分泌→インスリン抵抗性→メタボリック
 (抗生物質などの薬の過剰投与で耐性がついてしまう問題と一緒)

・インスリノーマという病気→インスリンの異常分泌→インスリン抵抗性
 (PMID: 2195099)
 このインスリン抵抗性は健康な人にインスリンを継続的に投与するだけで生じる
 (PMID: 3884419, PMID: 7851681)
 2型糖尿病の人達にインスリンを投与する量を増やしていくと、
 血糖値は制御しやすくなるが、インスリン抵抗性は高まっていくので、体重が増える
 (PMID: 8422777)

インスリン抵抗性があると、食べ物に関係なくインスリンが多量に分泌される
 →肥満が肥満を招く(悪循環)

インスリン抵抗性が発現する場所は脳、肝臓、筋肉→これらは互いに影響しない(独立)
 (運動不足は筋肉のインスリン抵抗性に繋がる)

・抵抗性を生む2つの原因は1.高いホルモン値と、2.絶えず続く刺激
 インスリン抵抗性の場合、問題は1.食事の内容(※量よりも質)と、2.食事のタイミング

ファスティング:何も食べない(インスリンの分泌量が少ない)時間をもうけるべき
 間食(おやつ)はその効果をなくしてしまう

・実は食事内容よりも、食事回数(Eating Occasions)の方が大事(PMID: 21738451)
 →間食(おやつ)を摂るな、食べる回数を減らせ

 1.食べる回数を増やしても、代謝や減量効果は変わらない(PMID: 9155494, PMID: 19943985)
  (※食事回数を減らしても同じであるとも言えるのでは?)

 2.食べる回数を増やしても、満腹感は増えない(それどころか減る)(PMID: 20339363)

 3.食事回数が少なくても、糖尿病でない限り、血糖値は安定している(糖新生の存在)
  382日も絶食したのに、低血糖にならなかった人もいる(PMID: 4803438)
  (※たった1人の例で判断するのはサンプル不足なのでは?)


4部11章 社会的肥満~大手食品会社の思惑に注意

・食品会社は健康によい食品というマークを得るために、医療機関に資金提供している

・資金の提供元がどこであるかは、研究の結論に大きな影響を与える(PMID: 17214504)
 スポンサーにとって都合の悪い結論は公表されない→出版バイアス(公表バイアス)
 (※ようは金の力で真実が隠されてしまう→これは研究論文全体の問題)

・間食で儲かるのは食品会社だけ
 また、間食は加工食品が多いという問題もある
 (食品会社としては、長期保存できる加工食品の方が儲かる)

・朝食の是非:
  減量成功者の78%は朝食を摂っていたという論文(PMID: 11836452, PMID: 16002825)
  があるが、失敗した者がどうだったかも調べないと何とも言えない(対照群の不在)
  しかも参加者の多くは大卒の白人女性(被験者にバイアスあり)
 ↓
 朝食を摂らないと太るという研究はバイアスだらけであり、
 朝食と肥満(体重変化)の間に相関はない(PMID: 24004890←MA)

・アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンなどのホルモンのバランスは
 朝になれば自然に調節される(暁現象)ので、
 減量において、無理して朝食を摂る意義はない(朝食は習慣に過ぎない)

・朝食の摂取と減量の効果は関係ない(PMID: 24898236←RCT)
 代謝も朝食を摂っても摂らなくても同じ(PMID: 24898233←RCT)
 (※ただし、血糖値は朝食を摂った方が安定する)
 しかも朝食の摂取量を減らした方が1日の総摂取量を減らしやすい(PMID: 21241465)
 また、朝は忙しいので、精製・加工された糖質をつい摂ってしまうという問題もある

※というわけで、減量において朝食は有力な戦略ではない(下手すると逆効果)
 →MAあり(PMID: 30700403)

・健康的な食べ物(野菜や果物)を摂っても、不健康な食べ物も摂ったら無意味
 野菜や果物を増やしても体重は減らない(PMID: 24965308←MA)
 基本は不健康な食べ物を健康的な食べ物に「置き換える」ことである
 (※当たり前だが見落とされやすい基本→追加するのではなく、置き換える、と心得よ)


12章 所得が低いと太る

ミシシッピ州の人々が最も貧しく、最も肥満率が高い
 https://news.gallup.com/poll/167642/mississippians-obese-montanans-least-obese.aspx

・よく動く建設作業員などのブルーカラー低所得者の方が、
 あまり動かない投資家などのホワイトカラー、高所得者よりも太っている
 →運動(身体活動)だけでは説明できない何かがある

・精製・加工された炭水化物(特に糖質)は、政府が補助金を出しているため、安い
 具体的には、トウモロコシのコーンシロップや異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)、小麦など
 (https://farm.ewg.org/
 食品添加物補助金はりんごの約30倍(しかもこれでもりんごの補助金は野菜や果物の中で最高)
 →食べ物を「値段」で選ぶと太りやすい

・白砂糖(精製された炭水化物)がピマ族などの先住民族を糖尿病(肥満)にした
 この問題は伝統的な食生活が乱された1920年代以降のこと
 →意外にも、車の利用(による運動不足)やファーストフードはあまり関係ない
  それらが普及する前から糖尿病(肥満)の問題があったのだから


13章 ビッグ・チャイルド(肥満児)の問題

・1977年以降、肥満児は爆発的に増えた
 子供の頃に肥満だった人は心臓の病気になりやすい(PMID: 18057335)
 しかし、小児期に太っていても、成人期に通常の体重になれば、
 これまでに太ったことがない人と同じぐらい生きられる(PMID: 22087679)

・生後6か月未満の乳児の群でさえ、肥満が増えている(PMID: 16899790)
 これは従来のカロリー理論だけでは説明できない
 化学物質オベ(ビ)ソゲンの影響も考えられるが、データの多くは動物実験
 よって主な原因は「母親」の体重(インスリン値)である(PMID: 20691469)

1.子供の糖尿病リスク低減のための学校における大規模な実験(PMID: 20581420):
  減量に成功したが、介入群も対照群も同じ減量効果だった

2.学校の生徒を対象とした大規模なRCT(Pathways, PMID: 14594792):
  体重(と体脂肪率)は減らなかった

3.学校を対象とした最も大規模なRCT(PMID: 10401802):
  体重(BMI)は減らなかった

4.女の子を対象とした肥満防止プログラム(PMID: 21041593):
  体重(BMI)は減らなかった(それどころか2年後の体脂肪率は増えた)

↑上記の1~4はいずれも低カロリー(低脂質)と運動を推奨する内容
 →これらのやり方は間違っている(×要求が抽象的、あいまい、多すぎる)

しかし…

・オーストラリアの0~5歳の1万2千人の子供を対象とした実験(PMID: 20147472):
  1.糖分が多い飲み物を減らし、水や牛乳を飲む
  2.エネルギー密度が高い間食を減らし、野菜や果物を摂る
 →ようやく減量に成功(○要求が具体的、分かりやすい、少ない)

・イギリスのプログラム(PMID: 15107313):
  (加糖された)炭酸飲料の消費量を減らすだけで、成功
  (微差だが、対照群の肥満率が7.5%も増えたことを考えると、成功したと言える)

・2003年から2012年にかけて小児肥満率が有意に減少した(PMID: 24570244)
 →減糖の効果が背景にある


5部14章 太る食事~甘い罠、砂糖(中毒性あり)

・「砂糖」は太る→最大の問題は加糖飲料(炭酸飲料)で、その消費量は1970年代から増加
 →健康意識が高まり、2003年から減少(コカ・コーラの売上も減少)
 →加糖飲料業界はアジアへ→中国の成人の11.6%が2型糖尿病に!(PMID: 24002281)

・砂糖入り飲料の消費量が多いと、体重が増え、2型糖尿病になりやすくなる(PMID: 15328324)
 1日に摂る砂糖が150kcal分増えるごとに、糖尿病になる率が1.1%上昇する(PMID: 23460912)
 →砂糖は高度に精製された炭水化物なので、インスリンの分泌を促す(つまり太る)

・アジア人(中国人)は米などの炭水化物を食べるが、多くはでんぷんで、砂糖ではない
 ゆえに昔の中国人はやせていたし、糖尿病になりにくかった
 (PMID: 13679952→9章のアジア人のパラドックス

・砂糖、スクロース(ショ糖):グルコースブドウ糖)とフルクトース(果糖)
  グルコースブドウ糖):脳のエネルギー源、肝臓の糖新生で作れる→問題ない
  フルクトース(果糖):果物の糖、直接のエネルギー源ではない→これが諸悪の根源

・白いパンは単純糖質ではなく、複合糖質だが、加糖飲料と同じぐらい血糖値を上げる
 GI(グリセミック指数)値で判断すると、ピーナッツの10倍以上!
 →だがGI値は血糖値のみに着目している→インスリン値を考慮していない(→6~7章)

・最も甘い糖、「フルクトース(果糖)」はGI値が低いが(血糖値をあまり上げないが)…
 …実際は摂取量が多すぎると太る
 (なお、自然の果物に含まれるフルクトースは微量なので、極度に恐れる必要はない)

・特に人工甘味料「果糖ブドウ糖液糖」(55%のフルクトースと45%のグルコース)は
 美味で安くて使いやすいので、食品会社が加工食品によく添加している

・実際、フルクトース(果糖)や果糖ブドウ糖液糖の摂取量が増え始めた1970年代以降、
 肥満も増えている(PMID: 15051594)

・フルクトースを代謝できるのは「肝臓」だけなので、
 過剰摂取すると「脂肪肝」になり、肝臓にインスリン抵抗性を発現させる
 (短期間でインスリン感受性を低下させる→糖尿病予備軍)(PMID: 6986758, PMID: 19381015)

・砂糖はグルコースによるインスリンの分泌と、フルクトースによるインスリン抵抗性を
 同時に引き起こすので、倍速で太る

・MAであるPMID: 22351714では、フルクトースの体重への影響が否定されているが、
 それは質の低い短期間の実験ばかり集めているから
 (例えば喫煙の悪影響を数週間の実験だけで証明するのは困難)
 →砂糖、特にフルクトースの悪影響は数年後、数十年後に現れる

・砂糖(特に加糖飲料)を減らせ!→「人工甘味料」に置き換えるのもダメ!(→15章)
 実際、減糖のおかげでアメリカの肥満率も糖尿病の発生率も近年は落ち着いてきている
 (PMID: 24570244→13章、PMID: 25247518)


15章 ダイエット(炭酸)飲料、特に「人工甘味料」は太る飲み物

・ダイエット(炭酸)飲料(ダイエットコーラペプシワン)でダイエットしようとしても、
 「人工甘味料」であるアスパルテームスクラロースサッカリンなどが含まれているため、
 かえって体重が増える(PMID: 20589192)
 これらは「無糖」とうたわれている加工食品にも含まれている

アメリカの人工甘味料の摂取量は激増中→肥満の増加と一致(PMID: 19056571)

・アガべ・シロップはGI値が低いが、ほとんどがフルクトース(→14章)なので、悪い
 天然ものとして日本などで流行っているステビアも、血糖値をほとんど変えないが、
 所詮は加工された甘味料なので、特段よいということはない

・7万人以上の中年女性を対象とした1年間の調査(PMID: 3714671):
  人工甘味料を摂っても体重は減らない(それどころか増える可能性さえある)

・5000人以上のテキサス州の成人を対象とした8年間の調査(PMID: 18535548):
  人工甘味料の常飲者は非常飲者よりも太りやすい
  →人工甘味料は肥満の流行を防ぐものではなく、むしろ拍車をかけている

・ダイエット飲料の摂取は血管(脳や心臓)の病気のリスク増加と関連している
 (PMID: 22282311, https://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140329175110.htm
 メタボリック症候群とも関連(PMID: 18212291, PMID: 17646581)

・繰り返しになるが、肥満における諸悪の根源はカロリーではなくインスリン
 →人工甘味料スクラロースはカロリーも糖分もないがインスリン値を上げる(PMID: 23633524)
 →アスパルテームや天然甘味料と言われるステビアも、
  血糖値はほとんど上げないが、砂糖よりもインスリン値を上げる(PMID: 20303371)

※しかし、ステビアアスパルテームやショ糖(砂糖)に比べて、
 血糖値やインスリン値を悪化させないというのがPMID: 20303371の結果
 →著者の主張と、出典の内容が一致していないので、ここは要検証

・脳はカロリーのない甘味料を摂ると、これだけでは十分な報酬ではないと考え、
 食欲を増進させる→結果として食べ過ぎるので、かえって太る(前述したPMID: 20589192)

・肥満の青年224人を対象としたRCT(PMID: 22998339):
  砂糖の摂取量は減るが、体重(BMI)は有意差なし

・結果が正反対である研究も→違いは研究資金を出しているのが誰か(→11章の出版バイアス)
 →スポンサーが食品会社である研究の多く:加糖飲料と体重の増加は関係ない
  一方で利害関係のない研究の多く:加糖飲料と体重の増加は関係ある(PMID: 24391479)


16章 食物繊維を摂ろう

・血糖値に着目したGI(グリセミック指数)値は「炭水化物50グラムあたり」の値
 →例えばスイカGI値は高いが、スイカのほとんどは水分
  スイカの炭水化物を50g摂るためには、スイカを1kgも食べる必要がある
 →その食品に含まれる炭水化物の割合を考慮したGL(グリセミック負荷)値を見るべき

・精製・加工された炭水化物(特に糖質)はGL(グリセミック負荷)値が高い
 欠点は吸収されやすい、食べ過ぎる、栄養価が低い
  過去160年間で小麦粉のミネラルの密度は減少した(PMID: 19013359)
  小麦などのグルテンによるセリアック病も激増した(PMID: 19362553)

・でんぷんのほとんどを占めるアミロペクチンA, B, Cが消化・吸収されにくい順番:
  Cの豆(→ガス→おなら)、Bのバナナやジャガイモ、Aの小麦

・「食物繊維」が重要→炭水化物から糖質を除いたもの、消化・吸収されにくい栄養阻害物質

 1.特に発酵したものは酢酸、酪酸などの短鎖脂肪酸になり、
  肝臓からのグルコース放出を抑えられる(=インスリンの抑制)(PMID: 8510524)
  (豆などの水溶性食物繊維は小麦などの不溶性食物繊維よりも発酵しやすい)

 2.かさが増すので、満腹になり、食事量が減る
  そして便が増える(PMID: 2841437, PMID: 11494646)

 3.太りにくい(→糖尿病の予防)
  (PMID: 8195547, PMID: 9482761, PMID: 10546693←10年にわたる長期研究)

 4.血糖値やインスリン値の改善(PMID: 10805824, PMID: 16306541)

2型糖尿病になりやすい最悪の組み合わせは、GI値(やGL値)が高く、
 食物繊維が少ない食事(PMID: 15277155, PMID: 9020271, PMID: 9096978)

・昔は高炭水化物食でも食物繊維が多い自然食品なので問題なかった(→9章)が、
 今は食物繊維が少ない冷凍食などの加工食品ばかりなので、肥満や糖尿病が流行っている

たんぱく質や脂質も摂ると、満腹ホルモン(ペプチドYY、コレシストキニン)があるので、
 食べ過ぎないですむが、炭水化物だけを摂ると、食べ過ぎる(別腹現象)

×残念ながら、食物繊維はがんには効かない(PMID: 9895396, PMID: 10770980)
 心臓病にも効かない→AHA(アメリカ心臓協会)が提唱した低脂質も無効で、
 有効なのは高脂質の魚、オリーブオイルやナッツ(地中海食)→脂質は悪くない!
 (PMID: 2571009, PMID: 23432189←RCT)

・「酢」も有効
 インスリン感受性を改善する(PMID: 14694010)
 小さじ2杯で血糖値を下げる→食事の5時間前よりも食事中に摂る方が効果的(PMID: 20068289)
 (※本では「食事の直前」だが、出典では「mealtime(食事中)」)

・酢飯は白米よりもGI値が低い(PMID: 12792658)
 酢漬けにしたキュウリ(ピクルス)は生のキュウリよりもGI値インスリン値が低い(PMID: 11451723)
 酢を加えたジャガイモはそのままのジャガイモよりもGI値インスリン値が低い(PMID: 16034360)

・酢は2型糖尿病患者の血糖値も下げる(PMID: 17712024)
 実は「ピーナッツ」も有効(PMID: 16321601)
 (しかし酢の機序は未知→唾液アミラーゼの抑制?)


17章 たんぱく質(肉)への過剰期待

・必須脂肪酸必須アミノ酸はあるが、必須炭水化物や必須糖質はない

・低炭水化物食による当初の体重減少は水分の減少に過ぎないという批判は正しい
 機序はインスリンによる腎臓の水分量の変化
 しかし、これは悪いことか? 足をむくませたい人などいるだろうか?

・(腎臓病を患っていない)健康な人であれば、高たんぱく質食でも心配ない(PMID: 22653255)
 ↓
 しかし、高たんぱく質食の最大の問題はやせないこと
 実はたんぱく質も炭水化物と同じくらいインスリン値を上げる(→9章、PMID: 9356547)
 そしてインスリン値は血糖値(GI値)とは無関係に上がる(→6~7章)

インスリン分泌を促すのは血糖だけではない!

 アミノ酸の「ロイシン」もインスリン分泌を促す(PMID: 5919349, PMID: 1959475)
 (※よって、糖質制限「だけ」では、インスリンの「完全な」抑制は不可能)

 「インクレチン」効果(反応)もインスリン分泌を促す
  同じ血糖反応でも、経口摂取の方が静脈内投与よりもインスリン分泌を促す(PMID: 3514343)
  →胃が「インクレチン」というホルモンを分泌するから
  (直接投与しない、口からの摂取の方が影響するのは非常に珍しい)

 「頭相(とうそう)」もインスリン分泌を促す
  視覚、嗅覚、味覚によって反射的に起こる胃液の分泌(食べ物を見るだけで体が太ろうとする)
  例えばスクロースサッカリンで口をすすぐだけでインスリン値は上がる(PMID: 18556090)

・要するに、どんな食べ物を摂ってもインスリンは分泌される(=太る)
 ただし、太る原因はカロリーではなく、インスリン
 (しかしオリーブオイルなどの脂質は血糖もインスリンもほとんど上昇させない)

・乳製品のGI値は低いが、そのインスリン値は高い(PMID: 11641749)
 特に牛乳のホエイ(プロテイン)←インクレチンの働き(PMID: 15531672, PMID: 25005331)
 ↓
・しかし、インクレチン・ホルモンは胃が内容物を排出するのを遅らせる効果もある
 →インスリン分泌を促すが、満腹感を覚えるので、食べ過ぎないですむ
 (特にホエイプロテインが有効→PMID: 20456814 / エキセナチド?)

・「赤肉」は体重増加に繋がる(PMID: 20592131, PMID: 16534521, PMID: 21696306)
 1.現在のほとんどの牛は草ではなく穀物を食べているので、肉の質が違う?(PMID: 11960292)
  (※グラスフェッド(grass-fed)とグレインフェッド(grain-fed))
  (抗生物質の投与の影響も? 天然と養殖の差も?)
 2.内臓以外の食用部位のみを食べ過ぎている(果物の果肉を捨てて、果汁のみを飲むのと同じ)
  →低脂質・高たんぱく質の加工食品になってしまう

・「乳製品」は体重増加に繋がらない→むしろ肥満や2型糖尿病の予防になる
 →有効なのはヨーグルト(←発酵しているから?)で、無効なのは低脂肪牛乳
 (PMID: 17158433 / PMID: 11966382, PMID: 15883237, PMID: 16155263 / PMID: 21696306)
 →乳製品は肉よりも一度に食べるたんぱく質の量が少ないので、太りにくいのだろう

・というわけで、(動物性)たんぱく質も結局はインスリン分泌を促すが、
 満腹感があるというインクレチンによる予防効果も見逃せない
 →(当たり前だが)お腹がすいていない時は無理して食べないのが減量のコツ

・今までの簡単なまとめ:
  精製・加工された炭水化物(特に糖質のフルクトース)、(動物性)たんぱく質
  ストレスによるコルチゾール、インクレチンによるインスリン分泌など
  ↓
  高インスリン値やインスリン抵抗性→肥満
  ↑
  一方で、食物繊維や酢、インクレチンによる満腹感が肥満を予防

・加工食品を避け、自然食品を摂るパレオダイエット(原始人ダイエット)も有効か
 だがプロテイン・バーは加工食品なのでヘルシーではない


18章 脂質・脂肪は敵ではない

・アンセル・キーズ博士(→3章のミネソタ飢餓実験)の7か国研究(PMID: 7754982)の結論は、
 心臓発作や脳卒中を予防するために、脂質、特に「飽和脂肪酸」を制限し、植物油を使う
 ↓
飽和脂肪酸→血中コレステロール→心疾患リスクという相関があり、
 一価不飽和脂肪酸(地中海食)はそれを予防する(https://www.sevencountriesstudy.com/

しかし…

・心疾患は炎症によるもの
 コレステロールは重要な細胞膜のもとで、血液をドロドロにするものではない
 そもそも血中コレステロールの80%は肝臓で作れるので、食事の影響はわずか20%

・7か国研究は相関関係であり、因果関係ではない
 低脂質にしても心疾患のリスクは不変(PMID: 16467234←RCT→3章)

・7か国研究は「栄養主義」(3大栄養素の割合のみに着目したもの)で、単純化し過ぎである
 個々の食品の長所や短所を無視している
 例えばアボカドはマーガリンと同じ高脂質の食品だが、良質である

・動物性脂肪(飽和脂肪酸)を減らして、トウモロコシなどの植物油を増やしても、
 多価不飽和脂肪酸(←必須脂肪酸)のオメガ6脂肪酸が増えるので、
 炎症物質(エイコサノイド)が増えてしまう(魚などに含まれるオメガ3脂肪酸は抗炎症物質)
 →現代の西洋食はオメガ6がオメガ3に対して多過ぎる(PMID: 1908631)

・植物油ならすべて健康的であるという考え方は間違っている
 バターの代わりとして使われるマーガリンはトランス脂肪酸を含む加工食品なので悪い
 ↓
トランス脂肪酸コレステロールの値を悪化させる(PMID: 2374566)
 総エネルギー摂取量の2%だけで心疾患リスクが上がる(PMID: 16611951)
 トランス脂肪酸を含むマーガリンを摂ると、心臓病になりやすいが、
 バターはあまり関係ない(PMID: 9229205)
 (天然のトランス脂肪酸は問題ない)

・脂質、飽和脂肪酸、食事のコレステロールと、
 血中コレステロール、心疾患、脳卒中、死亡率は無関係
 (PMID: 998550, PMID: 9366580, PMID: 16018792,
  PMID: 24723079←MA、PMID: 20071648←MA)

・それどころか、日本の研究では、飽和脂肪酸脳卒中を予防する
 (PMID: 20685950, PMID: 24597664, PMID: 23404536,
  https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3273.html
 脂質、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸の摂取と男の脳卒中のリスクは逆相関(PMID: 9417007)

・脂質・脂肪は高カロリーなので太りそうだが…
  高脂肪の乳製品と体重増加(肥満)には関連性がない(PMID: 22810464)
  それどころか、全乳は低脂肪乳よりもやせる(PMID: 17158433)

・(アメリカの場合、)脂質・脂肪の割合を下手に減らしても、
 肥満の人がさらに増えるだけである(PMID: 12120421)

・カロリー(脂質)制限は減量においても、健康においても無意味(PMID: 16467234→3章)


6部19章 解決法~食べても太りにくい食べ物

・従来のダイエット法はいずれも短期的には成功したが、長期的には失敗した
 本気で減量したい場合は長期の問題を見るべき(時間依存→インスリン抵抗性→10章)

・鍵はインスリンで、どんな食べ物でもインスリン分泌を促すため、
 どのダイエット法も、短期(約半年)なら成功するし、有意差はない
 (PMID: 19246357, PMID: 25182101←2014年のMA)

・だが、肥満の原因は多元的なので、カロリーなどの部分的な原因を見るだけでは甘い
 ほとんどのダイエット法は問題の一部しか見ていないので、長期的にはリバウンドしやすい
 →複数の要因に対する複数のアプローチを同時にしなければならない


STEP 1:添加糖を減らす

・「砂糖(スクロース(ショ糖))」、特に「フルクトース(果糖)」を減らす→14章
 もちろん「人工甘味料」、特に「果糖ブドウ糖液糖」も減らす→15章
 ↓
 これらの欠点は、インスリン値の上昇とインスリン抵抗性の発現、
 満腹感をもたらすものがないので食べ過ぎる点、悪影響を相殺する食物繊維(→16章)がない点
 (ただし、果物のフルクトースなどの天然の糖は少量で低濃度なので問題ない)

・食品会社はラベルに「砂糖」と明記せずに、いくつもの異なる名称を記すので注意
 →例えばスクロース(ショ糖)、グルコース、デキストロース(ブドウ糖)、
  フルクトース(果糖)、マルトース(麦芽糖)、異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)など

・加工食品、特に「ソース」やドレッシングに注意

1-1.デザートを新鮮な果物、ナッツ類、チーズ、ダークチョコレートにする

 「ダークチョコレート」の効果は血圧の低下、インスリン値の改善、心疾患リスクの低減で、
 有効成分はカカオに含まれる食物繊維、ポリフェノール(抗酸化物質)など
 (PMID: 16027246, PMID: 18716168, PMID: 20858571)
 (ミルクチョコレートは砂糖だらけなので無効)

 「ナッツ類」、特にピスタチオの効果は心疾患や糖尿病の低減、血糖値やインスリン値の改善で、
 有効成分は一価不飽和脂肪酸、トコフェロール(ビタミンE)、マグネシウム(→地中海食)
 (PMID: 20199998, PMID: 18716181, PMID: 25125505)

1-2.間食をやめる(「常に」食べるのをやめる)
 インスリン抵抗性の発現(→10章)と精製・加工食品の摂取(→11章)を防ぐ

※「少しずつしか食べていないのにやせない」と嘆く中年女性を見かけるが、
 そういう人はこのインスリン抵抗性を軽視しているのかもしれない

1-3.減量において、朝食を無理して食べる意義はない(→11章)
 忙しい朝は精製・加工食品を摂りがち→例えば朝食用シリアルは砂糖が多いので逆効果
 (当たり前だが)お腹がすいていない時は無理して食べない(→17章)
 ↓
 どうしても朝食を摂りたい時は、砂糖が使われていない「(ギリシャ)ヨーグルト」、
 インスタントではない、食物繊維入りの「オートミール」、
 様々な調理法で楽しめる「卵」などを摂る

 卵の効果は、抗酸化物質による目の保護、心疾患の予防など
 (PMID: 16340654, PMID: 19369056, PMID: 23676423←MA、PMID: 23295181←MA)
 (※ただし、PMID: 23676423によると、2型糖尿病のリスクとは関連している可能性がある)

1-4.加糖飲料を避け、砂糖なしの「炭酸水」や「水」を飲む(→14~15章)
 
インスリン値や体重を悪化させない「赤ワイン」も少量なら問題ない
 (PMID: 11092514, PMID: 9100213, PMID: 15736107)

・「コーヒー」(や紅茶)も、1日6杯までなら、2型糖尿病を予防する(カフェインの有無は問わない)
 (PMID: 20008687←MA, PMID: 19727658, PMID: 18842784)
 コーヒーの摂取量と総死亡率は逆相関(PMID: 22591295, PMID: 18559841)

 ※昔の研究では、コーヒーをよく飲む人はタバコを吸う傾向がある点を無視していたが、
  喫煙の影響を取り除いて分析し直すと、コーヒーは無害である

 コーヒーのカフェインは認知症アルツハイマー病を予防する?
 (PMID: 20182054, PMID: 20182026←MA)
 コーヒーのカフェインはパーキンソン病も予防する?(※意外だが、タバコも有効?)
 (PMID: 12205639←MA、PMID: 10819950)
 コーヒーは肝硬変や肝臓がんも予防する?
 (PMID: 16772246, PMID: 17484871←MA)

・「緑茶」(や紅茶)もカテキンなどのポリフェノールがあるので、有効
 効果はインスリン値の改善、脂肪燃焼の促進、がんの予防など
 (PMID: 11087528, PMID: 15570050, PMID: 16582024, PMID: 24172301, PMID: 10702779,
  PMID: 18326618, PMID: 10584049, PMID: 15464031)
 ↓
 減量効果あり!(ただし、その効果は1~2kg程度)(PMID: 19597519←MA)

・「ボーンブロス」(動物の骨のだし汁)も有効


STEP 2:精製された穀物を減らす

・加工食品、特に小麦粉や、小麦粉を用いるベーカリー製品を減らす

・野菜・果物などの天然の炭水化物は、加工されていないので、問題ない

・食物繊維が多い「キヌア」、「チアシード」、「豆類」(→特に「枝豆」)を食べる


STEP 3:たんぱく質を減らす

たんぱく質を総摂取エネルギーの20~30%程度に抑える

・高たんぱく質食は制限が多く、やせないので推奨できない(→17章)
 プロテイン・バーなどの加工食品に頼ってしまうという問題もある


STEP 4:良い脂質・脂肪を増やす(→18章)

・脂質は3大栄養素の中でインスリン分泌を最も促さない成分なので、太るもとではない

・天然の脂質(オリーブオイル、バター、ヤシ油、牛脂)を選ぶ
 加工された植物油は炎症のもとであるオメガ6脂肪酸があるので、避ける

・一価不飽和脂肪酸オレイン酸)を重視する地中海食では、
 「(エキストラ)ヴァージンオリーブオイル」が有効

 効果は抗炎症、抗酸化(PMID: 11410071)、コレステロール値の改善(PMID: 8517637)、
 血栓の防止(PMID: 13129466)、血圧の低下(PMID: 10737284)、
 脳卒中リスクの低減(PMID: 24775425←MA)など

 しかし精製されている「ピュアオリーブオイル」は避ける
 それと光や熱で酸化するものなので、深緑色のガラスに入れ、冷暗所で保管する

・オメガ3脂肪酸が多い「ナッツ」(←これも地中海食)、特にくるみ、
 オレイン酸や食物繊維が多い「アボカド」も有効
 「乳製品」も問題ない(PMID: 22932282←RCT)

・動物性の脂質も極度に恐れる必要はない


STEP 5:食物繊維と酢を増やす(→16章)

・基本的に、自然(天然)食品は加工食品よりも食物繊維が多い

グルコマンナンを豊富に含む「コンニャク」、「酢」(PMID: 12792658)などが有効


20章 間欠的ファスティング(断食)

・19章は食事の内容(質)だけで、長期(時間依存、インスリン抵抗性)の問題(→10章)ではない
 ↓
 どんな食べ物でもインスリン分泌を促すという基本があるので、
 インスリン抵抗性の発現を本格的に防ぐためには、「食事のタイミング」も考えるべき
 ↓
 昔からある24~36時間の間欠的なファスティング(断食)しかない!
 何も食べない(絶食)時間が長ければ長いほど脂肪燃焼できる
 (これは従来のカロリー制限では不可能)

ファスティングの効果は、インスリン値の改善、アドレナリンや安静時エネルギー消費量の上昇、
 筋肉や骨を維持する成長ホルモンの分泌、脂肪燃焼
 (PMID: 2355952, PMID: 3127426 / PMID: 15640462, PMID: 10837292)

・絶食すると、体はエネルギーの摂取先を食べ物から体脂肪に変える
 また、肝臓の糖新生があるので、絶食しても脳は働く

・382日間もファスティングを行うことで、200kg以上もあった体重を約80kgにした人もいるので、
 マルチビタミンのサプリを飲めば、栄養失調、電解質の異常、低血糖などの心配はない
 →予想よりも楽に長く続けられる(PMID: 4803438)(唯一の懸念は尿酸値の上昇?)

ファスティングをしても、体脂肪率4%以上なら、筋肉や基礎代謝量は落ちない
 薪(まき)(体脂肪)があるのに、まずソファ(筋肉)を燃やす人はいない

・1日おきのファスティング70日間で、体重は約6%、体脂肪は約11%も減少、
 除脂肪体重(筋肉)は不変、コレステロール値と中性脂肪は大幅に改善、
 成長ホルモンの分泌量も増加(PMID: 20300080)
 同じ摂取カロリーでも、1日1食は1日3食よりも体重や体脂肪が減る(PMID: 17413096)

ファスティングをしても、食べ過ぎてしまう心配はない
 1日あたりの摂取カロリーは減る(PMID: 12461679)
 (※もっとも長期で考えると、結局は従来のカロリー制限に繋がっているような…)

・短期間(半年)の減量効果は従来のカロリー制限と同じだが、
 間欠的ファスティングの方がインスリン値やインスリン抵抗性を改善できる(PMID: 20921964)
 →間欠的ファスティングとカロリー制限を同時に行うのも効果的で、
  危険な内臓脂肪から先に減る(PMID: 23171320)

・逆に食事の回数を増やすと、脂肪肝になりやすい(PMID: 24668862←RCT)

ファスティングはお金や時間の制限がないので、簡単
 カロリー計算などは不要で、とにかく、肥満の根本原因はインスリン・ホルモン
 基本は1.何を食べるかを考え、2.いつ食べるかを考えるだけ
 あとは睡眠不足~ストレス~コルチゾールという流れに注意(→8章)


間欠的ファスティングの付録

・絶食中は「塩分不足」に注意

・「シナモン」は血糖値を下げ、胃の内容の排出を遅らせる(PMID: 17556692)

・糖尿病患者は血糖値や血圧に注意

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~レビュー・考察・感想~


本書の短所

・自論を正当化させるために、自分にとって都合のよい医療論文だけを抽出している
 しかもその論文の一部を拡大解釈している時もある
 そもそも論文のエビデンスのレベルがばらばらである

 一方で自分にとって都合の悪い論は、重箱の隅をつつくような批判をしたり、
 基準が厳しいメタ分析などで否定している

 これでは偏った独自解釈が多過ぎて、公平な議論にならない
 部分的にはうなずける点もあるが、全面的に正しい本かどうかはかなり怪しい
 (これは本書のみの欠点ではなく、多くの医療・健康の本やテレビ番組の欠点)

・(間食をやめるぐらいならまだ理解できるが…)解決法のファスティングは非現実的では?
 これでは従来の極端な方法(カロリー制限や運動神話)とたいして変わらない
 脱落する者が多そうな治療法は一般化できない
 加えて、サンプル(被験者の人数)がまだ足りないと考えられる


本書の長所

・減量(ダイエット)の難しさを再確認できる
 肥満はカロリー計算や意志の弱さだけでは説明できない複雑な現象であると分かる
 →やせている人でも太っている人の減量の苦労を少しは理解できるようになるかもしれない

・様々な医療論文(研究や実験)を確認できる
 →医学や栄養学に興味を持つきっかけになる


本書で述べられている通り、肥満の発生原因は多元的であり、未知の部分もある
また、そもそも医学(特に栄養学)のほとんどは、厳密に考えると、証拠不十分である
始まったばかりの研究もあるので、本書の見解が後にくつがえされる可能性も否定できない

以上の問題を理解したうえで、うのみにすることなく、疑いながら読めば、
部分的には有用であり、面白い本である