完本 エヴァンゲリオン解読 そして夢の続き
本の紹介です。
- 作者: 北村正裕
- 出版社/メーカー: 静山社
- 発売日: 2010/05/07
- メディア: 文庫
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有名アニメ、エヴァンゲリオン(旧作)を考察した本。
エヴァンゲリオンを考察している本は多数存在するわけだが、その中でもこの本は以下の点で秀逸である。
1.最新のビデオフォーマット版(リテイク版)に基づいて考察している。
ビデオフォーマット版とはTV版の弐拾壱話から弐拾四話を修正し、追加シーンを加えたバージョン。
この追加シーンでTV放映時にはっきりしなかった物語の核心に迫る事実を明らかにしている。
これを無視して誤解した解釈をしている本があまりにも多く、
たとえば2000年の大瀧啓裕『エヴァンゲリオンの夢』(東京創元社)はその典型である。
本書はそうしたビデオフォーマット版の細かい違いまで丁寧に考察している。
2.あくまで作品そのものを論理的に考察している。
宗教、心理学など作品外の現実にある知識を持込んで考察したり、社会現象として批評したりしている本は他にいくらでもあるが、
それらは作品背景にとらわれるあまり、肝心のエヴァそのものを見失っていることが多い。
しかしこの本はそうした問題から比較的脱却できている。
3.具体的根拠に基づいて演繹的に考察している。
逃げずに自分の考えをはっきりと表明しており、
「ここにこう書いてあるからこうだ」という事実に近づくうえでの基本を忠実に踏襲している。
これならたとえ本書の解釈に賛同できなくても「ここがこう間違っている」と指摘できるので、建設的な内容である。
4.かなり細かい所まで考察しているので、分析欲をかきたてられる。
もう一度エヴァを見直したくなる。これが1番大きいかも。
追記(2013/08/21)
無論、この本も完全な答えを述べているわけではない。内容を鵜呑みにしてはいけない。
たとえば「赤木ナオコが零号機の魂である」という考え方は独創的ではあるが、公式の見解ではない。
公式見解に従うのであれば、零号機の魂は「ない」とするのが妥当。
しかし、3で述べた通り、ある程度、演繹的な考察を行っているため、論に飛躍がない。
そのため、建設的な批判も可能な構成になっている。
是非はともかく、姿勢としてはもっとも真摯にエヴァと向き合っている本だと思う。