2006年(2009年)春アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のまとめ・考察・感想
2006年(2009年)春アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』をまとめる。
本作は谷川流のライトノベル『涼宮ハルヒシリーズ』(角川、2003年~)を原作とするテレビアニメである。
※執筆の際、wikipediaやwikipedia(アニメ)やニコニコ(時系列)を参照した。
※2009年版の放送順(=時系列順)にまとめた。
2006年版の場合、2→3→5→10→13→14→4→7→6→8→1→12→11→9話の順に見れば時系列順になる。
詳しくはwikipediaの6 時系列、wikipedia(アニメ)の2 ストーリー・各話構成、8 各話リスト、ニコニコ(時系列)を参照。
※主人公のキョンの視点で要約した。主語がない文で始まっている箇条書きの場合、その主語はキョン。
第1話「涼宮ハルヒの憂鬱 I」…時系列は高1の4~5月。原作の『憂鬱』(1巻)のプロローグ・第一章・第二章に対応。
・主人公(キョン)の独白(子供騙しのオカルトから卒業して、この世の普通さに慣れた、という話)
・東中出身の涼宮ハルヒ
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、
あたしのところに来なさい。以上。」
・ハルヒに話しかける
・谷口(と国木田)によるハルヒの噂話(奇人ぶり、モテるが誰とも付き合わない件、朝倉涼子など)
・ハルヒの奇行:髪型を毎日変える、男に構わず着替える、あらゆるクラブに仮入部するも入部せず
・再びハルヒに話しかけ、髪型について問う。その際、「どこかで会ったことがある?」と言われる(伏線)。
その翌日、髪を切った彼女を見て動揺する。
その後、彼女が普通の人間ではなく、面白い人間を求めていることを知る。
・谷口・国木田・朝倉がハルヒと話すキョンを見て驚く
・席替えで窓際後方へ。ハルヒはその後ろへ。
・ハルヒが部活の発足を決意。
文化部の部室棟(旧館)にある文芸部の部室を借り、
長門有希(1年、文芸部、寡黙な読書家)と朝比奈みくる(2年、書道部、巨乳)を部員にしたうえで、
クラブ名をSOS団「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」にする。
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第2話「涼宮ハルヒの憂鬱 II」…時系列は高1の5月。原作の『憂鬱』(1巻)の第二章・第三章に対応。
・ハルヒとキョンが何かを企てているという噂が広まる
・ハルヒがコンピューター研究会を強請ることでパソコンを強奪。キョンがそれでサイトを作成。
・ハルヒが朝比奈と一緒にバニーガールの格好でビラ配りをして、教師に止められる
・バニー騒ぎの噂が広まる。朝比奈がショックで学校を休む。
・長門に薦められた本を読む際に「午後七時 光陽園駅前公園にて待つ」と書かれた栞を発見(妹が一瞬、登場)
・長門の家へ行き、彼女が普通の人間ではなく宇宙人(*1)であることを知る
*1…この銀河を統括する情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース
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第3話「涼宮ハルヒの憂鬱 III」…時系列は高1の5月。原作の『憂鬱』(1巻)の第三章・第四章・第五章に対応。
・長門の話の要約
・長門の仕事は3年前に観測した自律進化の可能性を秘めているハルヒを観察すること
・ハルヒは自分の都合のよいように周囲の環境情報を操作する特殊能力がある
・キョンはハルヒに選ばれた(*1)イレギュラー因子であり、ハルヒにとっての「鍵」である
・1年9組に転校して来た古泉一樹が部員になる
・ハルヒが朝比奈にメイドの格好をさせ、写真を撮る
・土曜日、くじ引きで二手に分かれて市内を探索
・朝比奈と探索。その際、ハルヒに「デートじゃないのよ」と言われる(*2)。
探索中、朝比奈が自身が未来人であることを明かす。
そしてハルヒのせいで3年前に時間の歪みができて、それ以上の過去に遡ることができなくなってしまったことと、
キョンがハルヒに選ばれた人であることを打ち明け、それ以外のことについては「禁則事項です」と言う。
・長門と探索(図書館で長門の貸出カードを作る)
・週明け、ハルヒに『しあわせの青い鳥』(*3)について語りかける
・古泉が自身が超能力者であることを明かす。
そして3年前に発足した『機関』の一員として、神に等しい力を有すハルヒを監視していることを打ち明ける。
・結局、ハルヒは部室に来ず
*1…要するに「ハルヒに好かれた」ということ。ハルヒの初恋を示唆。
*2…ハルヒの嫉妬。本当はキョンと探索したいのだろう。このことはこの後の不機嫌な態度からも理解できる。
*3…メーテルリンクの本。探し続けていた幸せの青い鳥が、最も身近な鳥籠の中にあったという物語。
要するにキョンは「わざわざ市内探索しなくても、身近な場所に面白いものはたくさんある」と言いたいのだろう。
もっと言えば、ハルヒの初恋の相手であるキョンが身近にいることも示唆している。もどかしい2人である。
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第4話「涼宮ハルヒの憂鬱 IV」…時系列は高1の5月。原作の『憂鬱』(1巻)の第五章・第六章に対応。
・ハルヒが恋愛を嫌悪し、憂鬱になる。朝倉がそんなハルヒを気にかけ「恋煩いでもしてるのかしら」と言う(*1)。
・朝比奈の写真をアップロードしようとしているハルヒを止め、その画像を保存する
・下駄箱にあったメッセージの指示通りに、放課後、誰もいない教室(1年5組)へ。
そこにいた朝倉が、ハルヒの出方を見るために、ナイフと超人的な力でキョンを殺そうとする。
それを長門が超人的な力で止め、自身のバックアップである朝倉を消し、教室を再構成する(眼鏡の再構成は忘れる)。
しかし、キョンに抱きかかえられているところを谷口に見られてしまう。
・朝倉が急に転校(長門の情報操作)。それを聞いたハルヒが元気になる(*2)。
・昼休み、未来から来た朝比奈に出会う。
朝比奈が未来人である証拠として左胸のホクロを見せ(伏線)、「白雪姫って知ってます?」(伏線)と言う。
・長門に「眼鏡はない方がいいぞ」と言う
・ハルヒと朝倉家に行くことになる
*1, 2…朝倉は憂鬱なハルヒを元気にするために、あえて過激なことをしたのかもしれない
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第5話「涼宮ハルヒの憂鬱 V」…時系列は高1の5月。原作の『憂鬱』(1巻)の第六章に対応。
・ハルヒ(*1)と朝倉家(505号室)を調査する。その帰り際、長門に「気をつけて」と言われる。
・ハルヒが踏み切りで、小学6年生の時に自分の存在の小ささを自覚したことを話し、特別ではない普通の日常を嘆く(*2)
・古泉が『人間原理』(人間が観測することによって、初めて宇宙が存在するという思想)について語り(*3)、
願望を実現する能力をハルヒが持っていることと、キョンのせいで彼女の精神が不安定になっていることを警戒する
・古泉がハルヒの精神が不安定になると発生する閉鎖空間にキョンを入れる。
そしてハルヒのストレスが限界に達した時に発生して、破壊行動をする青い巨人・『神人』をキョンに見せ、
赤い光になってそれを倒す超能力を披露する(閉鎖空間発生時にしか使えない能力)。
・帰り際、古泉に「涼宮さんの動向には注意して」と言われる
*1…ハルヒによると、高校は「北高」
*2…これに対してキョンが「今の普通のハルヒで十分特別」と告白すれば、話があっさり終わる。
キョンがハルヒの憂鬱を治す「鍵」を握っている。
*3…要するに、ハルヒが観測する(願う)ことによって、初めてこの世界が存在していると言いたいのだろう
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第6話「涼宮ハルヒの憂鬱 VI」…時系列は高1の5月。原作の『憂鬱』(1巻)の第七章・エピローグに対応。
・自分が巻き込まれていることを疑問に思う
・谷口の誤解を解こうとする(4話参照)
・例の写真を見て、朝比奈の左胸のホクロを確認(4話参照)。その写真を朝比奈に見られそうになる。
・体操服姿のハルヒが朝比奈にくっついているキョンを見て激怒し、着替えるために彼を追い出す(*1)
・キョンが普通の日常を楽しむ中、ハルヒが不機嫌になる
・寝ている間に閉鎖空間(学校)へ。傍にハルヒ。
・古泉が赤い光の状態で、ハルヒが現実世界に愛想を尽かして新しい世界を創造し始めたせいで
世界崩壊の危機に陥っていることをキョンに伝え、キョンだけがハルヒに選ばれたことを指摘。
そして2人を「アダムとイヴ」にたとえ、「パソコンの電源を入れるように」という長門の伝言を言い残し、消える。
・長門がパソコンで「あなたに賭ける」「また図書館に」「sleeping beauty(*2)」と伝える
・青い巨人・『神人』が現れる。それを見たハルヒが喜び、現状を望む。
しかしキョンがそれを否定し、あくまで元の世界に戻ることを望む。
そして朝比奈の「白雪姫って知ってます?」(4話参照)と長門の「sleeping beauty」を思い出し、
かつてのハルヒのポニーテールを褒め、ハルヒにキスする。
・自分の部屋に戻り、悶絶
・朝、学校で髪をポニーテールにしているハルヒに会い、「似合ってるぞ」と言う
・朝比奈の左胸のホクロを指摘(4話参照)
・市内の不思議探索パトロール2回目。長門・朝比奈・古泉が休んだため、今度はハルヒと2人きり。
「宇宙人と未来人と超能力者について話してやろうと俺は思っている」と独白。
*1…1話で周囲の男に構わず着替えていたことを考えると、明らかにキョンを意識するようになっている
*2…日本語で『眠れる森の美女』。「王子様がお姫様にキスしたように、キョンもハルヒにキスしろ」という意味。
4話の朝比奈の「白雪姫って知ってます?」というセリフも同じ意味。
第7話「涼宮ハルヒの退屈」…時系列は高1の6月。原作の『退屈』(3巻)に対応。
・野球(2年生の鶴屋が登場)
第8話「笹の葉ラプソディ」…時系列は高1の7月と中1の7月。原作の『退屈』(3巻)に対応。
・7月7日。皆で七夕の願い事を書く。
・朝比奈と3年前へ。そこで大人の朝比奈に会い、眠っている高校生の朝比奈をおんぶしながら東中へ。
・東中学校に侵入しようとしている中1のハルヒに会い(*1)、彼女の命令で校庭に白線を引く。
そして宇宙人・未来人・超能力者の存在を認め、ジョン・スミスと名乗り、七夕祝いに理解を示す。
・目覚めた朝比奈がTPDDとやらをなくしたことに気づき、それを嘆く
・長門から渡された短冊に校庭に書いたメッセージと同じ文様が書かれていることに気づく
・自宅で待機している3年前の長門に会い、朝比奈と布団で寝ることで、元の時間へ
(長門によると、部屋の時間を3年間止めたらしい)
・長門によると、ハルヒのメッセージは「私はここにいる」
・7月8日。ハルヒが3年前を思い出し、憂鬱になる。
・長門と古泉がキョンの時間の連続性に関する疑問を難解な言葉(*2)で煙に巻く
*1…1話でハルヒが「どこかで会ったことがある?」と言っているが、それはここで会ったという意味だろう。
ここでの行動が3年後の一連の騒動を引き起こすきっかけになる。何とも感慨深い。
*2…長門のセリフはゲーデル不完全性定理のこと。詳しくはwikipediaを参照。
古泉がキングより重要だと見なしたクイーンはおそらくハルヒの暗喩。
検索すると様々な解釈がヒットするが、作者の谷川氏の言葉遊びに過ぎないので、深読みしても意味がない。
第9話「ミステリックサイン」…時系列は高1の7月。原作の『退屈』(3巻)に対応。
・ハルヒが作ったSOS団のエンブレムをサイトのトップページに載せる
・SOS団のエンブレムが歪む
・2年生の喜緑江美里が自身の彼氏であるコンピュータ研の部長が行方不明になっていることを告げる
・ハルヒ抜きで部屋を捜索し、異空間へ。そこでカマドウマを倒し、部長を助ける。
・長門がハルヒが作ったSOS団のエンブレムがきっかけになっていることを見抜く。
その容量が436ペタバイト(*1)になり、アクセスカウンターが3万近く(*2)になる。
・被害が広がらないようにSOS団を長門が作ったZOZ団にする
・一連の出来事は長門の仕業ではないかと疑い、孤独な彼女の気持ちを考える
(なお、コンピュータ研の部長いわく、彼女はいない)
*1, 2…原作『退屈』(平成21年1月20日42版発行)では、それぞれ「テラバイト」、「3千近く」
第10話「孤島症候群(前編)」
第11話「孤島症候群(後編)」…時系列は高1の7月。原作の『退屈』(3巻)に対応。
・無人島で合宿。名探偵ごっこ。新川執事、森園生メイド、多丸兄弟が登場。
第12~19話「エンドレスエイト I~VIII」…時系列は高1の8月。原作の『暴走』(5巻)に対応。
・高校野球、プール、盆踊り(浴衣・金魚すくい・お面・花火)、昆虫採集(セミ)、
カエルの着ぐるみでアルバイト、天体観測、バッティングセンターなど
・8月30日。一通り終了。
8月31日。宿題終わらず。(12話)
・ループ。デジャヴ。
・夜、同じ時間(8月17~31日)を何度も(*1)ループしていることが明らかに。
古泉によると、ハルヒが何かやり残したことがあると感じているせいで、ループしている。
・ハルヒに何を言えばいいか悩むも何も言えず(13~18話)
・宿題を終わらせていないことに気づいたおかげで、ループから抜け出す(19話)
*1…長門によると、15498、15499、15513、15521、15524、15527、15532回繰り返している
第20~24話「涼宮ハルヒの溜息 I~V」…時系列は高1の11月。原作の『溜息』(2巻)に対応。
・映画。ハルヒが超監督になる。
・ハルヒがフィクションの世界を望んだせいで、朝比奈が目からレーザーやカッターを出してしまう
・鶴屋家でハルヒと喧嘩
・古泉がハルヒの願望で鳩が白くなってしまったことを告げ、キョンにハルヒと仲直りすることを勧める
・ポニーテールにしようとしていたハルヒに「この映画は絶対成功させよう」と言ってしまったせいで
ハルヒがますます元気になってしまう。
そのせいで、桜が咲いたり、シャミセンというオスの三毛猫が喋り出したりしてしまう。
・古泉が、元の世界に戻すために、映画の内容がデタラメであることをハルヒに自覚させることを勧める
・誰かが映画を完成させる。
「この物語はフィクション」という魔法の言葉で全てがキャンセルされ、元の世界に戻る。
・ハルヒに長門・朝比奈・古泉がそれぞれ宇宙人・未来人・超能力者であることを告げるも、あっさり否定される
第25話「朝比奈ミクルの冒険 Episode00」…時系列は高1の11月。原作の『動揺』(6巻)に対応。
・20~24話で作った映画
第26話「ライブアライブ」…時系列は高1の11月。原作の『動揺』(6巻)に対応。
・文化祭当日。ハルヒと長門が病気や怪我で出られなくなったENOZのメンバーの代理としてバンドに参加。
第27話「射手座の日」…時系列は高1の11月。原作の『暴走』(5巻)に対応。
・ゲーム『The Day of Sagittarius 3』(*1)でコンピュータ研と勝負。
途中で相手のイカサマに気づいた長門がゲームの内容を書き換えることで対抗し勝利。
*1…日本語で『射手座の日』
第28話「サムデイ イン ザ レイン」…時系列は高1の11月。原作なし。
・長門(*1)とハルヒが寝ているキョンにカーディガンをかける
・ハルヒと相合傘をしながら下校
*1…長門の気持ちがキョンに傾きかけている。これが劇場版の『消失』に繋がる。
・オープニングテーマ
「冒険でしょでしょ?」(1~5、7、9~11、26~28話)、
「Super Driver」(12~22話)、「恋のミクル伝説」(25話)、6・8・23・24話はなし
・エンディングテーマ
「ハレ晴レユカイ」(1~5、7、9~11、25~28)、「冒険でしょでしょ?」(6話)、
「止マレ!」(8、12~18、20~23)、19・24話はなし
・挿入歌
「God knows...」、「Lost my music」(26話)
~考察・感想~
本作はなぜ話題になったのか?
・制作会社・京アニの美少女ものとしての売り込み方が巧みであり、インパクト十分であった(見た目の問題)
・youtubeなどの動画サイトが普及し始めた時期だったので、ネット上で話題になった(タイミングの問題)。
特にエンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」の踊りや「ライブアライブ」の「God knows...」があちこちで使われた。
・学生生活を思い出す内容なので、ノスタルジックである(懐かしい)
・一見、単なる美少女ものだが、実はSFものとして楽しむこともできるようになっている
(原作を先に読んだ人がよくする評価)
・(様々なSF要素で煙に巻いているが)実はキョンとハルヒの恋愛(ボーイ・ミーツ・ガール)を描いている
作中、「あなたはハルヒに選ばれた『鍵』」、「白雪姫って知ってます?」、「アダムとイヴ」などと
色々な表現で誤魔化しているが、これらは要するに「キョンがハルヒに好かれた」ということと
「それゆえキョンはハルヒに告白するべき」ということを示している。
恋愛だけを考えるとそういう解釈になる。
以下、キョンとハルヒの恋愛だと言える根拠を挙げていく。
1話で「こうして俺たちは出会っちまった。しみじみと思う。偶然だと信じたいと。」とキョンが言っている。
オープニングテーマ「冒険でしょでしょ?」で「なんでだろ あなたを選んだ私です」と歌っている。
→これらはいずれもキョンとハルヒの出会い(ボーイ・ミーツ・ガール)を示している。
(文句を言い合いながらも)キョンとハルヒが部活動に肯定的である。
→信頼関係がなければこれはありえない。
3話でハルヒがキョンと2人きりで市内探索できないことを不満に思っている。
→これは本当はキョンと探索したいハルヒの嫉妬であろう(3話の脚注*2を参照)。
さらに言えば、特別なことを探している割には、彼女は平凡なイベントばかり重視している。
ここから単に皆(特にキョン)と遊びたいだけだと分かる。
4話でハルヒが恋愛を嫌悪して憂鬱になっている。
→これはキョンへの恋煩いだろう。初恋なので、どう対応すればよいかよく分からないのだろう。
5話でハルヒが特別ではない普通の日常を嘆いている。
→これに対してキョンが「今の普通のハルヒで十分特別」と告白すれば話があっさり終わる(5話の脚注*2を参照)。
ハルヒは深層心理ではキョンの告白を待っているのだろう。
その意味で、この話は「普通」の中での「特別」を勝ち得るまでの話と言える。
6話でハルヒが着替える際、キョンを追い出している。
→キョンに見られることを意識するようになっている(6話の脚注*1を参照)。
6話でキョンがハルヒのポニーテールを褒め、キスしている。ハルヒが髪型をポニーテールにしている。
→言うまでもなく、好意がなければ、このような行動は通常しない。
・元の世界がよかったと「再認識」し、主人公が自己決断し、元の世界に帰る構造が巧みに描かれている。
『憂鬱』は「閉鎖空間の中でキョンが元の世界がよいと再認識する」話である。
ついでに言えば、「ハルヒへの好意を再認識する」話でもある。
そうでなければ、わざわざ彼女にポニーテールを要求することもないし、ましてキスもしないだろう。
ついでに言えば、実は映画の『消失』も同じような構造になっている。
『消失』も「キョンが改めてハルヒがいる元の世界に帰りたいと再認識する」点では同じ物語である。
要するに『憂鬱』も『消失』もメーテルリンクの『しあわせの青い鳥』を描いている(3話の脚注*3を参照)。
いずれも探し続けていた幸せの青い鳥が、最も身近な鳥籠の中にあったと再認識しているわけである。
それをSF要素でエンターテインしながらさりげなく言及するというのが、作者の大まかな構想なのだろう。
以上の要素を本作はバランスよく兼ね備えていた。ゆえに話題になり、売れた。
なお、これらに関しては、このブログの『涼宮ハルヒの憂鬱』の意義でも触れた。