赤目無冠のぶろぐ

アニメ要約・批評、仮想通貨(ビットコイン、モナコイン)、将棋・麻雀、音楽(作曲、DTM、ベース)、思想など

帰ってきたニートの一日の作者。詳しくははじめにへ。

『神戸事件を読む 酒鬼薔薇は本当に少年Aなのか?』の要約

熊谷(くまがい)英彦による『神戸事件を読む 酒鬼薔薇は本当に少年Aなのか?』
鹿砦社(ろくさいしゃ)、2001年)の要約・まとめ・考察・感想・レビュー


まえがき

・少年が無実である可能性はきわめて高い

・筆跡鑑定は判定不能で、ナイフにしろ、池の金ノコやハンマーにしろ、凶器と言えるものは何もない。
 少年の自供以外に証拠はない。


第一章 疑問

・金ノコの歯型を遺体の切断面と照合していない(少なくとも発表していない)

・市民団体『神戸事件の真相を究明する会』によると、少年の自供内容と報道内容とに食い違いがある。

 正門前に頭部が置かれた時間帯。自供では午前1~2時だが、報道では午前5時30分~6時40分。
 その間、何度も頭部が置き換えられているという証言あり。しかも不審人物を何人もの人が目撃している。

 少年は遺体をタンク山から動かしていないと供述したが、公開捜査では、遺体は見つからなかった。
 しかも少年はその捜索中に頭部を切断したと供述した。そんなことができるのか?

 マスコミは革マル派の戯言に過ぎないと一蹴したが、
 大事なことは政治的な立場や思想ではなく、事実か否か検証すること。

・矛盾点は南京錠の数や捨てた場所、糸ノコギリを金ノコギリに訂正したこと、頭部を隠した場所など。
 要するに、決定的な物証がない。ほとんどは少年の自供。


第二章 経緯

・少年には「懲役13年」のような難解な文章を書けない?

・少年A逮捕の発端は元同級生の証言

※元同級生は超重要人物。個人的には、こいつもかなり怪しい。


第三章 殺害

・淳君の靴の底に付着していた土砂とタンク山の土砂は合致しなかった(『毎日新聞』97年6月2日夕刊)。
 しかも5月24日の午後は雨。つまり靴に土砂が付着しやすい日。

 行方不明直後の捜索ではタンク山のアンテナ基地に遺体はなかった。

 しかし途中で殺害現場はタンク山という見解に。根拠は頭部の笹の葉と死斑が背中に集中していたこと。

 しかし少年は首を「かなり丁寧に洗った」と供述している。

 それに死斑が十分に固定化してから死体を動かしたとすれば、タンク山以外でも殺害できる。

 『神戸事件の真相を究明する会』が発行した2冊目のパンフレット『続神戸小学生惨殺事件の真相』によると、
 神戸大学医学部法医学教室の龍野嘉紹(たつのよしつぐ)は「死斑は淡紅色、通常よりも赤っぽい」と証言した。
 つまり通常の状態ではなく、一酸化炭素中毒や青酸中毒、凍死に近い状態。
 ↓
 死体を冷凍した?

・少年は馬乗りになって淳君の首を締め付けたと供述。しかし防御創はなかった。
 少年は犯行時、ナイフを使わなかった。しかし日頃の彼はナイフを持ち歩いていた。

・目撃証言は不審な黒い車、黒いごみ袋を持った中年男性。しかも時間は午前5~6時。


第四章 遺体

・少年が供述した胴体の位置と実際に発見された胴体の位置が異なる。
 捜索しても発見できなかった胴体は頭部が放置された当日に難なく見つかった。

・首の第二頸椎を切断したため、頭部を真っ直ぐ立てて置くのは困難
 (医者である被害者の父親を疑う声さえあった)


第五章 切断

・糸ノコなのか金ノコなのか曖昧

・少年はノコギリで南京錠を切断したと供述。しかし周囲に金属片はなかった。

・首の切断面は鋭く水平→金ノコでは困難→電動ノコの可能性あり

・冷凍すれば綺麗に切断できる。
 ゆえに凍死状態を示す赤い死斑があり(第三章)、頭髪がシャワーを浴びた直後のようにびっしょりと濡れていた。


第六章 遺留品

・遺留品から指紋は検出されなかった
 →犯人は手袋をはめ、切手をコーティングし、指紋が残りにくい感熱紙を使用→高度な犯罪

・第二挑戦状は幼女誘拐連続殺人事件の宮崎勤の犯行声明やゾディアックのメッセージに酷似

※「ぼくには国籍がない」→在日? 外国人?

・「本命」は犯人、「吊るされる」は死刑を示す警察用語
 →(あってはならないが)警察関係者が犯人?(『警察公論』97年8月号)
 →同じ兵庫県で起こったグリコ森永事件に酷似


第七章 真相

・挑戦状の投函場所:神戸西郵便局のアルバイトの証言あり。しかし少年は須磨北郵便局と供述。

・いくつものアリバイあり


~総評~

 はっきり冤罪と言い切れるかは分からないが、かなり怪しい事件なのは確かだ。
 ポイントは、目撃証言と違う点、決定的な物的証拠がない点、少年の供述内容が矛盾だらけである点。

 特に冷凍説は説得力がある。
 根拠は首の綺麗な切断面、凍死状態を示す赤い死斑、濡れていた頭髪。

 個人的には、元同級生の証言と「国籍がない」と書かれた挑戦状が気になる。


~番外編~

 少年による『絶歌』の103ページにも以下のような不可解な文が書かれている。

 「押収されたナイフから、被害者とは一致しない血液反応が出た」
 「他にも誰か刺したのではないかと訊かれたが、まったく身に覚えがない」
 「僕は自分か猫の血ではないかと答えた」

 ここでも物的証拠の不一致を確認できる。