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赤目無冠のぶろぐ

アニメ、将棋・麻雀、音楽(作曲、DTM、ベース)、思想など

fc2のぶろぐからやって来た男。詳しくははじめにへ。

『けいおん!』の何が面白いのか~1期12話の唯のセリフ、音楽という架け橋、wikipediaの批評

けいおん!(*1)の何が面白いのか、簡単に述べておく。
個人的には、1期12話の唯のセリフが印象的だったので、それを紹介しながら、『けいおん!』を正当化しておきたい。
賛否両論ある作品だが、商業的には成功した作品(*2)なので、語っておく必要があると判断した。

  *1…原作はかきふらいによる4コマ漫画。wikipediaを参照。

  *2…売り上げを見れば一目瞭然。成功作と言える。



1期12話の唯のセリフ~リフレイン効果、なつかしさ、普遍性、音楽など

「そういえば、入学式の時もこの道を走った(*1)。
 何かしなきゃって思いながら。
 何をすればいいんだろうって思いながら。
 このまま大人になっちゃうのかなって思いながら。

 ねぇ、私。
 あの頃(*2)の私、心配しなくていいよ(*3)。
 すぐ見つかるから(*4)。
 私にもできることが。
 夢中になれることが。
 大切な、大切な、大切な場所が!」


まず、*1で1話の冒頭の場面を繰り返している。
繰り返すことで「なつかしい」「また1話から見たい」という気持ちが強くなる。
*2もかつての幼かった自分を思い返すセリフで、この場面のおかげで視聴者が「なつかしい」と感じる。
そういう繰り返しによる効果(リフレイン効果)が随所にある。

そして*3や*4で視聴者を安心させ、誰にでも夢中になれることやできることがあると悟らせている。
ここでのセリフは基本的には唯自身のことなのだが、視聴者に語りかけているような演出になっている。
そのため、夢中になれることやできることがなくて困っている人も勇気づけられているかのような感覚に陥る。
また、既に夢や目標を決めている視聴者でも、かつての何もなかった自分を思い出す形になっているため、
懐かしさを感じ、初心にかえることができる。
要するに誰が見ても何かしら思うところがある普遍的な演出になっている。
この普遍性のある演出のおかげで多くのファンが支持してくれたのだろう。

さらに、こうした演出を「ふでペン~ボールペン~」という「音楽」を流しながら表現している点も見逃せない。
「音楽」のおかげで説得力のある演出になっている。

色々な場面があるが、個人的にはこの場面がよかったと思う。
この1期12話のおかげで、2期をやれたのだろう。

それにしても平凡な4コマ漫画をここまで昇華させるとは…やはり京都アニメーションはすごい。



「音楽」という架け橋がもたらしたもの(考察)

 本作は一部のマニアしか見ない「美少女もの」に「音楽」という要素を上手に採り入れたおかげで売れたのだろう。
 「音楽」という一般的な要素があれば、日頃アニメを敬遠している一般人を巻き込むことができるからである。

 また、アニメソング、楽器などの関連商品も売れたので、コンテンツの裾野が広がった。
 wikipediaの6 テレビアニメの6.2 楽曲によると、
 『けいおん!』関連の多くのアニメソングがオリコンの週間チャートのトップ10にランクインした。
 これはアニメソングとしては異例である。

 加えて、この現象で様々な人が「音楽」という架け橋を通じてアニメに接するようになり、
 一般人とアニメオタクの垣根が曖昧になった可能性がある。

 本作は、アニメのようなマニアックなものでも、
 「音楽」という平易な要素で一般化できることを実証したのではなかろうか。



wikipediaの8 評価の8.1 批評~要約と脚注(私の意見)

・『けいおん!』の特徴:
  理想ばかりで挫折・葛藤がない。男がいない。(*1)→薄っぺらい物語?
  ←→しかし、それが現代アニメの潮流。「空気系」と評される『らき☆すた』の到達点。
    しかも本作の場合、『らき☆すた』のようなオタク系の要素さえない。
    サザエさんのような日常ものに美少女ものを加えた単純な構造。

・ヒットした理由:上述の特徴が現代社会の需要だったからでは?(by宇野など)

・卒業したという点では『あずまんが大王』と同様に潔い(by暮沢)(*2)

・同じ大学に進学することに失望した(要するに薄っぺらい)(by古谷)(*3)

・成長ありきが既に大人の固定観念で、現代社会(の子供)はそれを欲していないのでは?(by廣田)(*4)


  *1…『思想地図vol.4』の「物語とアニメーションの未来」でも、東氏が同じようなことを指摘している

  *2…鋭い指摘だと思う。生温い内容とはいえ、日常もので「卒業」を表現した点は評価できる。

  *3…これは私も考えた。実際には、高卒で就職する人もいるし、受験で失敗してしまう人もいる。
    また、皆とは違う夢を見つけて違う道を選ぶ人もいる。
    そのような経緯でだんだん皆がバラバラになっていくのが高校3年生というものなのだが、
    本作は徹底してそうした現実の負の側面を排除している。このあたりは賛否両論ある所だろう。

  *4…マーケティングとしては彼の意見が妥当なのだろう。現実問題、本作は売れたのだから。
    その意味で、ジャパニメーションは『けいおん!』で
    昔の『新世紀エヴァンゲリオン』のような鬱々とした葛藤&成長ものから卒業し、世代交代したと言える。
    上の世代(←28歳の私さえ含める)はもうこの流行についていけない。
    次世代(今の若い10代)が台頭して、価値観が断絶してしまっているのだろう。
    制作者や批評家はそうした変遷を強く自覚して、頭を切りかえる必要がある。
    そうしないと売れるものを作れないし、冷静に現状を評価できない。



・上の世代の音楽活動よりも丸くなったという話(余談)

  唯達のバンドはかなり優しく、ゆるい。
  さわ子(先生)達のバンドのような反骨精神がほとんどない。
  「ロック」「パンク」「メタル」などに見られる反社会的な主張もない(そもそも主張さえない?)。
  堀込先生でさえ、「昔のお前(さわ子)達に比べたら可愛いもんだな」と劇場版で言っている。
  これらは世代の違いを感じる所である。
  今時の子供達にとって、もはや音楽は娯楽や友人との思い出作りに過ぎず、主張は何でもよいのだろう。
  実際、音楽性の違いでもめる場面が劇場版の冒頭であったが、結局はふざけているだけだった。

・音楽のジャンル(余談2)

  (どうでもいいかもしれないが)放課後ティータイムは何系の音楽なのだろうか?
  一昔前はただのアニメソングに過ぎなかったが、下手な音楽よりもアニメソングの方が売れてしまう今日を考えると、
  分類を考え直す必要があるのかもしれない。
  強いて言えば、ゆとり世代以降の「Jポップ」だろうか?