最近、うつ病の人間が増えている。
問題視されているが、個人的には、これは人類が進化していることを示していると思う。
言ってみれば新人類の台頭である。
基本、うつ病の人は何をやっても楽しくないと思う。
報酬に対する欲求が希薄になる傾向がある*1。褒めてもモノを与えても反応しなくなる。
一見するとこれは悪いことである。
しかし、言い換えれば、簡単に金銭などの甘い誘惑に釣られなくなったということでもある。
この観点では、成長している面もある。
たとえば子供はお金を渡す知らないおじさんについていってはいけないと教わる。
教えないとお金という報酬に反応してついていってしまうからである。
本能だけでサルのように行動していたら変質者に騙されてしまう。
あらゆる誘惑で人を騙そうとする詐欺師も似たようなものである。
そうした人達は報酬に釣られやすい人間の本能を上手に活かす。
だが、うつ病の人は(最低限の生活ができているのなら)金などどうでもいい。
「金で私を利用しようとしている。陰謀だ。」と考える。左記は特に統合失調症*2などで見られる典型的な発言である。
つまり報酬に反応しない。そのため、詐欺師もかえって困る。だいたいの場合、リアクションがない人間が一番困る。
つまり、うつ病の人は(一般の人に比べて)利害関係で動かない可能性がある。
金で口封じすることもできない。
すべてがどうでもいい状態になっているので、インセンティブというものがそもそも存在しない。
経済学的には困った存在である。
何故なら経済学(特にミクロ経済学)では、各主体は利得を最大にするように行動していると仮定しているからである。
だがうつ病の人間にはそれも通用しない。利得などどうでもいいのだから。
おそらく、あらゆる誘惑に反応しない「うつ」は人類の進化を示唆している。
安易に目先のものに釣られず、思慮深くその先を見据えているとも言えるからである。
そういう慎重な人間の割合が先進国になって増えてきたのだろう。
実際、発展途上国で「うつ病」になる人間を聞いたことがない。
そのうち金を稼いで上へ行こうというインセンティブもなくなっていく。
金で人を釣って搾取するのが労働の実態だと多くの人間が悟るからである。
実は多くの産業は夢という幻想を売って搾取する仕組みになっている。
例えばアイドル業界は異性にありもしない媚びを売ることで金を得る仕組みを作っているだけであり、真実ではない。
それによって企画者の懐に金が流れ込むだけである。
パチンコもアミューズメントと言えば聞こえはいいが、
また当たるかもしれないという幻想を売ることによって射幸心を煽り、多くの人を自殺に追い込んでいる。
グリーなどのソーシャルゲームの商法も似たようなもので、実は何も生み出していない。
幻想を売り、金を掠め取る仕組みを巧みに作っただけである。
この実態を冷静に悟った時、人は必然的に「うつ」へ向かう。
無論、生活のために仕方なく働く者もたくさん残るだろう。
しかし、上記で述べたような実態を悟るにつれ、出世欲はなくしていくだろう。
また、上流の人間は現状より上に行く必要がないと考え始める。もう既に豊かだからである。
さらに言えば上流ほど内心では理解している。社会には「利用する者」と「利用される者」しかいないということに。
踊らされるピエロ(=騙されるバカ)がいなければ社会は成り立たない。
以上述べた考え方は既に若者の間で顕著になっている。だから若者は金を使わない。
単に不況なのもあるだろうが、「さらに上へ行こう」というインセンティブが価値観の変化に伴って弱まっている可能性がある。
ネットによっていろいろなものが幻想だと分かるようになってしまったという事情もあるだろう。
たとえばテレビ業界の多くがやらせであることがネットのリークによって分かってきている。
インタビューで答えている人が役者で他の番組で全く逆のことを言っていたりする。偏向報道も多々ある。
このような事実を知れば、虚偽を売る立場になるだけだと分かるので、業界への過度な憧れは若い時点でなくしていく。
昨今の若者がテレビに対して妙にさめているのは、すべてが可視化され、やらせ(幻想)だと分かるようになったからであろう。
さらに言えばもうネットがあるのだから、情報を発信することに金を出す必要はない。
もはや情報発信にプロもアマもない。すべてフリーの時代になったのだ。
・・・とまぁいろいろ述べてきたが、私のような「すべてフリー」とのたまう若者が中年になった時、
資本主義社会がどのような態度をとるのか、楽しみではある。
下手をすると、その時はもう「うつ病」であることが普通のことになっているかもしれない。
インセンティブもなく、どんよりと衰退していく気だるい感じが立派なステータスになるだろう。
そしてそれは悪いことではなく、単なる時代の変化に応じた進化、ないし順応であろう。